首筋にかかる静かな寝息と背中に感じる温もりに目を覚ました。 寝ぼけながら目線をゆっくり下におろす。 腰にゆるく巻きつけられた腕が目に入った。 (ああ、リヴァイ今日は休みって言ってたっけ) リヴァイは休みの前日は必ず私の部屋を訪れた。 一緒に夕飯を食べる日もあるが、大抵はよる遅くにやって来て、ベッドに潜り込んでくる日の方が多かった。 ごろんとリヴァイの方に体を向き直す。 普段の仏頂面からは想像出来ないくらい穏やかな寝顔に頬が緩んだ。 「・・・ん、」 そっと頬に触れれば、眉間に皺を寄せ、唸るリヴァイ。 起こすつもりは無かったんだけどな、と思いながら「おはよ」と囁いた。 が、返事はなく、うつろな瞳で私を見つめてくるだけ。 「ぶっ、」 突然、ぐっと頭を引き寄せられた。 リヴァイの胸元に顔が押し付けられ、上手く息が出来ない。 なんとかかんとか、息が出来る位置まで顔を動かし、リヴァイを見上げた。 寝てる。スースー、とそれは気持ち良さそうに眠っている。 ・・・どうやら、寝惚けながらも私を抱き寄せてくれたらしい。 (・・・やばい、なんか、) 幸せだ、と自然と緩んでしまった口元を誤魔化すようにリヴァイの胸に顔を埋めた。 一ヶ月後にはまた壁外調査を控えている。 またそこで多くの仲間を失うことになるだろう。 いや、もしかしたら自分が、リヴァイが命を落としてしまうかもしれない。 きゅうっと胸が締め付けられた。 いつだって残酷なこの世界だけど、今、この瞬間だけは、平凡な幸せを噛み締めていたい。 「リヴァイも、今、幸せだと感じる?」 一瞬でもいい。 リヴァイも私と同じ気持ちだったら嬉しいな。 眠っているリヴァイにぽそりと呟くがもちろん返事は無い。 ただ、ゆるく握り締めた手が、ほんの一瞬だけ、きゅっと握り返されたような気がした。 企画「幸福論」様に提出 |