「・・・あんたなんか、遊ばれてるだけなんだから!」


パアン、と乾いた音が廊下に響き渡る。
何が起こった?と目をぱちくりする中、頬がじんじんと熱を帯びてきたので、ああ、ぶたれたのかとぼんやりと理解した。


「・・・一体、なんなのよ?」


涙を目に溜めながら私に平手打ちを食らわせた女は既に廊下の遠く向こう。
その背を目で追いながら、ふつふつと怒りが込み上げてきた。
なんでまた見ず知らずの女にぶたれなきゃいけないのか。


「これは、リヴァイ絡みだな」


私の隣で一部始終を見ていたハンジが訳の分からないことを口に出した。


「・・・なんで、リヴァイ?」
「あいつモテるでしょ?最近、言い寄られる度に「女がいる」って言ってるらしいよ」
「・・・で?」
「だから、おそらくだけどアイルって言ってるんじゃないの?」
「誰が?」
「リヴァイが」
「誰と?」
「アイルと」
「付き合ってるって?」
「その通り!」


ふざけんな!とハンジに蹴りを入れた。


「いってえええ!!!私は関係ないだろ!!??」
「ごめん。怒りを抑えきれなかった」
「・・・迷惑な話だよ、ほんと。あーくそ、いってえ」






◆◆◆





「リヴァイ」
「ノックくらいしろ馬鹿女」
「・・・ちょっとここ見てよ」


デスクワークをしているリヴァイに詰め寄り、赤くなった頬を突き出した。


「それがなんだ?」
「見ず知らずの女にぶたれた」
「・・・ほう」
「ほう、じゃなくて!私に言わなきゃいけないことあるんじゃないの?」
「何もない」
「しらばっくれんな!」


私はあんたの女になった覚えはない!とダンッ!と勢いよく机を叩いた。
リヴァイは少しだけ驚いた表情を浮かべたが、またいつもの仏頂面に戻る。


「・・・群がってくる女が多すぎてな。しょうがなくだ」
「何が、しょうがなくだ。ふざけんな!それに、私の名前使うことないでしょ!」
「女がいると言えば、誰かと問われる」
「じゃあ、ハンジって言え!」
「あいつの名前を出したら、俺まで変態扱いされるだろうが」
「(それもそうか)じゃあ、ペトラって言え!」
「部下が俺のせいでぶたれるのは気に障る」
「なっ・・・嫌がらせされることを予想してたわけ!?っていうか、私だったらぶたれてもいいわけ!?」
「お前なら2倍にして返すだろ」
「はっ、2倍どころか10倍にして返すって・・・・・・」


ハッ、と口を覆った時にはもう遅かった。
リヴァイは「ほらな」といわんばかりの表情を浮かべている。
やられたらやりかえすがモットーな私を、リヴァイはよく知っているのだ。
・・・畜生、悔しい!!!!!


「・・・婚期が遅れたらリヴァイのせいだからね!」
「安心しろ。俺がもらってやる」
「えっ!?」


予期せぬ言葉に目を見開いた。



「嘘だ、馬鹿」



リヴァイが真っ赤になって固まる私を見ながら、口端を上げた。

もう、ほんとこの男むかつきすぎてどうしよう。



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