リヴァイ班で街に買い出しにやって来た。
久々の買い物に浮かれていた私は、一人で別行動を取っていた。
あちこち立ち寄りながらふらふら歩いていると、突然チンピラ達に囲まれた。


「ねえちゃん、可愛いな」


腕を掴まれ、耳元で囁かれた。
全身に虫酸が走る。
このまま殺してしまおうかと短剣に手を掛けたが、やめた。
面倒くさいから、叫んでしまおう。



「助けてー!!!!!!」



叫んだ瞬間、目の前にリヴァイが現れた。
あっという間に、チンピラ達をこてんばんにやっつける。




「リヴァイ、かっこうぃー!」
「…余裕で巨人2体も殺せる奴が、わざわざ叫んでんじゃねぇよ」




ハンカチで手を拭きながら舌打ちをするリヴァイ。
リヴァイは本気でキレた時しか拳を使わないと、誰かが言っていたのを思い出した。


(…さっきは、拳を使っていたな)


私の手を取り、歩き出すリヴァイの後ろ姿を見ながら、口元が緩んだ。










そんな中、リヴァイは気付いていた。
握り締めたアイルの手が震えていることに。




「オイ、アイル」
「ん?」
「助けて、って誰に向かって叫んだんだ?」




自分でも、馬鹿なことを聞いてしまったとは思っている。
だが、男に囲まれ、震えるアイルが求めた奴は誰だったのか、気になって仕方がなかった。




「は?そんなのリヴァイに決まってんじゃん」




当たり前のように、すらりと口に出すアイルに、思わず立ち止まる。




「もしね、私が叫んだらリヴァイは駆け付けてくれるのかなーって」




ごめん、試した、と悪戯っぽく笑うアイルに皺を寄せる。




「…試したってなんだ」
「いや、いくら実力がリヴァイと互角でもさ、私のこと女として見てくれてるのかなーって」




この間、リヴァイがチンピラに絡まれてる調査兵団の女の子のこと助けてるとこ見て、そう思ったんだよね、とへらへら笑うアイル。



「助けて、って叫ばれたら助けない訳ねぇだろ」
「うん、まあね。でも、あの時はチンピラ蹴散らしてたのに、今日は拳使ってたよね」




それって本気でキレてる証拠でしょ?とニヤニヤ笑いながら、俺を見つめるアイルに目を見開いた。
…こいつ、内心は本気で怖がっていた癖に、




「…可愛くねぇ」
「わ!手、振りほどくとかサイテー!」




(怖いなら怖いって素直に言え、馬鹿女)




が、アイルの中にあるプライドだろう。
怖いなんて女々しい台詞は絶対に言うはずがないとは分かっていた。
今だって、平気な振りを続けている。
苛ついた。
アイルにではない。
アイルに絡みやがったさっきのクソ野郎共にだ。



(二度とこんな思いさせるか)



待ってよー!と追い掛けてくるアイルを後ろに、熱を持った拳をぎゅっと握り締めた。



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