熱いシャワーを頭から浴びても、ベッドに潜り込み目を閉じても、あいつらの姿が脳裏から離れることはなかった。

アイルは、自分をさらけ出すことも、相手に深入りすることもしない。そんな奴だった筈だ。あいつの性格も実力も、俺が一番良く知っていると思っていたが、それは所詮昔の話なのか。何年も一緒にいたが、あんなにも無防備に眠るアイルを俺は見たことがない。

俺は、今のアイルをよく知らない。





◇◆◇





「エレンとアイルさん、昨夜、広間に寝ていたかもしれません」

確かではないんですけど、と朝食を食べている俺にペトラが耳打ちをしてきた。広間に起きてきたら、エレンとアイルさんが寝惚けた顔でソファーに座っていたんですよ、とペトラは眉をしかめている。…ああ、その通りだ。あいつらはルールを破り、広間に寝ていた。が、俺にしてみればルールなんざ糞食らえ、だ。兵長になったからこそ上からの取り決めに従っているが、俺自身、そんなもの正直どうでもよかった。それよりも何故、あいつがエレンと一緒に眠っていたかの方が俺にとっては重要だった。

訓練兵の頃は、いつも隣にはアイルがいた。俺には大方、心を開いているように思っていたが、今になってはそれすら不確かだ。あいつの隣には今、エレンがいる。最近までは、エルヴィンだ。傍に居なくても、アイルには俺しかいないと頭の何処かで思っていた俺は馬鹿だ。

あいつの全てを知りたいと思ったのも、無意識に触れてしまっていたのも、自分のモノにしたいという独占欲だということに、こうなって初めて気付いた。俺はアイルに対して仲間以上の感情を持っている。エレン達と楽しそうに朝食を食べるアイルの姿を見て、気付くと膝の上で拳を握り締めていた。


アイルにとって、俺はもう必要の無い存在なのか?
調査兵団に入ってからの空白の時間が憎い。



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