「アイルの様子はどうだ、リヴァイ」
「まあまあだろ。エレンとは特に仲が良いみたいだが」

会議後、エルヴィンの部屋を訪れた。それとなくアイルの様子を聞いてくるエルヴィンに、俺は確信する。

アイルには闇がある。俺の知らない何かがある。そしてそれをエルヴィンは知っている。確実に。エルヴィンがアイルを傍に置いていたのは、恐らく“それ”のせいだ。

昔から感じていた、違和感。笑顔の裏に、時折見せる暗く沈んだ瞳が俺の心に引っ掛かっていた。

「リヴァイ」
「なんだ?」
「…アイルを指名した理由は、エレンのことだけではないな?」

(流石だな。気付いてやがる)

アイルを傍に置ける、いい機会だと思った。アイルの実力は、俺とほぼ互角だ。エレンを守るため、指名しても不自然ではない。役職も付かず、エルヴィンの傍にいる方がよっぽど不自然だ。

「ああ、そうだ」
「…そうか」

認めると、エルヴィンが目を伏せた。もしかしたら、アイルを俺に渡したことを後悔しているのかもしれない。が、返さねぇぞ。絶対に。

アイルは何故、エルヴィンにはさらけ出し、俺には隠すのか。訓練兵の頃からずっと一緒に居たのは、エルヴィンじゃなく俺だろうが。腹の底からドス黒い感情が湧き上がる。



俺はあいつの全てを知りたい。



◇◆◇



エルヴィンの部屋を後にしたのは、深夜だった。城へと戻ると、広間のソファーにアイルとエレンが寄り添って寝ている。その姿を見た瞬間、またドス黒い感情が湧き上がる。エルヴィンの次に気を許すのは、俺じゃなく、エレンなのか?

アイルの前に立ち、そっと、頬に触れた。白くて柔らかい肌に。そのまま、親指で唇を撫でた。瞬間、アイルの体がピクッと動き、俺はハッと我に返る。手を引っ込め、部屋を後にした。

(…何やってるんだ、俺は)

俺はエルヴィンにも、エレンにも嫉妬しているのか?
腹の中でぐるぐると渦巻いているこの感情は嫉妬なのか?

アイルに触れた手が熱い。



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