書類がぎっしり入った箱を棚の上へと乗せようと必死になっている所です。つま先を最大限に伸ばしているせいか、ぷるぷる体が震えてしまう。重い!畜生、届かない!あと少しなのにっ…!

「…って、へいちょっ!見てないで手伝ってくださいよ!」

さっきから、後ろで腕組みをして私を眺めている兵長。多分、兵長でもぷるぷるになるくらいの高さなんだろうけど!でも、私より少しでかいだろうがあぁ!!!!助けろよこの野郎おぉ!!

「も、限界っ!足、つる!!!!!」

そう叫んだ瞬間、カツカツとブーツが鳴る音が近付いてくるのが分かった。助けてもらえる…!そう思った瞬間、腰をガッと掴まれた。

「ぎゃあ!」
「オイ、落とすなよ」

子供を抱き上げるかのように、ひょいと軽々しく抱き上げられた。体がふわりと宙に浮かぶ。

「…乗せたか?」
「あ、はい!」

私の返事にゆっくり降ろされていく。トン、と床に足がつくのと同時に呆然としていた頭が現実に引き戻された。

(え?今、抱き上げられた?兵長に?え?まじで?)

軽くパニック状態に陥る中、腰にはまだ兵長の手の感触がリアルに残っている。…残っている?目線をゆっくり下に降ろす。兵長の細いけどゴツゴツした手がまだがっしり私の腰を掴んでいた。

「…細ぇ」

耳元でぼそりと呟かれ、その低い声に、顔がカッと熱くなる。瞬間、グッと腰を掴む掌の力が強くなった。ぎゃっ!と可愛いげもない声が漏れてしまう。

「な、なっ!へへへ、へいちょ!?」
「筋肉、全然ねぇな」
「あ、ありますあります!だから離して下さいっ!」

必死に訴えると、掌の力が緩んだ。ホッと息をついたが、何を思ったか、兵長の手がするりと下腹部へ移動する。

ぷにっ。

「ぎゃあ!」

お腹の肉をつままれた。

「やっぱりねぇだろうが」

少しは鍛えろ、と呟きながら、何事もなかったかのように部屋を後にして行った。

(これって、セクハラだよ…!)

パタン、と閉まるドアの音を後ろに、私はその場にへたりと崩れ落ちた。



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