「明日、だね」 アイルはポツリと呟きながら、目の前に広がる川に石を投げた。夜独特の静けさの中、ポチャンと石が沈む音が響き渡る。 「…ああ」 ついに明日、壁外に出る。それなりの覚悟を持って調査兵団に入ったが、壁外は未知の世界だ。その恐怖は計り知れない。 「…ライナーと、同じ班が良かった」 またポチャンと石が沈む音が響いた。 きっと、アイルのことだ。最期は俺に看取られたい、なんて馬鹿なことを考えてるに違いない。膝を抱えて踞るアイルの体をぐっと引き寄せた。 「アイル」 「ん?」 「生きて帰ってくるぞ。絶対に」 「…うん」 生きて帰ってこれる保証なんて何処にもないが、生きることを諦めたらそれこそ終わりだ。 だけど、もし、今がアイルと過ごす最後の時になったら― 珍しく、良くないことを考えてしまった。 その思いを振り払うかのように、俺の体に顔を擦り寄せるアイルをギュッとキツく抱き締めた。 |