調査兵になってから、何度目の冬だろう。 同期には、一番に死ぬのはアイルだ、と酷いことを言われていたのにも関わらず、私はまだ生きている。 最近の壁外調査で唯一生き残っていた同期が死んだ。 次は私だろうか。 この雪景色も、今年で見れなくなるのだろうか。 「オイ、アイル。手が止まってるぞ」 積もった雪を兵長と2人でかいていた。 ボーッとしていた私は、慌てて手を動かす。 「何を考えていた?」 兵長が、こんなことを聞くなんて珍しい。 よっぽど思い詰めた顔をしてしまっていたのかもしれない。 「…雪、積もったなぁって」 「ああ」 「…私は、来年も雪かき出来るでしょうか」 ザクッと、一際大きい音がした。 兵長に視線を移すと、スコップが雪の上に刺さっている。眉間にはいつもの倍、皺が寄っていた。 「お前が死んだら、誰がこの雪をかくんだ?」 「はい?」 「寒い中、こんなめんどくせぇ仕事やる奴はお前しかいねぇだろ」 「ま、まあ」 「俺1人にやらせるつもりか?」 ぷっ、と吹き出してしまった。 なんて不器用な励まし方なんだろう。 「兵長、ありがとうございます。元気出ました」 「…そんなことより、冷えた」 「休憩しましょうか?温かいコーヒー淹れますよ」 「ああ、頼む」 冷えきった心が暖かくなった。 もし死んでしまったら、冬が来る度に兵長に恨まれそうだな、と思うと可笑しくて、また一人で小さく笑ってしまった。 |