「…兵長って、呼ぶな」 兵長という肩書きの俺じゃなく、一人の人間として、見て欲しかった。 俺だって悩むし、立ち止まりたくなる時もある。 だけど、兵長としての立場に囚われ、それをぶつける場所が見つからなかった。 限界寸前の俺が求めた場所は、アイルだった。 アイルの背中に額をくっつけ、佇む俺に、アイルはただただ固まっていた。 俺の弱さに幻滅したのか、それとも、 「…どんな兵長でも、私は受け止められますよ?」 ああ、そうだ。 だから俺はアイルを求めた。 こいつなら、俺の全てを、弱さも醜さも、全部包み込んでくれるような気がしたんだ。 「…兵長じゃなく、名前で呼べ」 「…リ、リヴァイ…さん?」 「さんは、付けるな」 「…リヴァイ」 ぎこちなく俺の名を呼ぶアイルの体を、抱き締めた。 「…今、私を抱き締めているのは兵長ではなく、リヴァイです。だから、思う存分吐き出しちゃってください」 なんでこいつは俺の欲しい言葉が分かるんだ。 アイルに言われるがまま、俺は自分の中にあるドロドロした感情を、初めて全部吐き出した。 「あの、」 「なんだ?」 「みんなの前でも、リ、リヴァイって呼んでいいんですか?」 「……2人でいる時だけにしろ」 「へへっ、了解です」 |