今年こそは、イケメンの彼氏とクリスマスを過ごすぞ!と意気込んでいたけれど、結局今年も出来なかった。窓の外をちらちらと舞う雪がなんとも儚く見える。世の中のカップルにとっては嬉しいホワイトクリスマスも私にとっては虚しいものでしかない。神様は本当に不公平だ。なんで私の目の前にはイケメンの恋人ではなく、書類の山なのか。聖なる夜をこの大量の書類と過ごさなくてはいけない事実に溜息しかでない。本当なら、美味しいお酒を飲みながら美味しいご飯をたべて、プレゼント交換なんかもしたりして。・・・止めた。もう帰ろう。明日が大変になるけど、こんな日に仕事なんてやってられない。ちょっと高めのワインでも買って、今日は一人で飲み明かすことにしよう。それはそれで寂しい気もするけど、仕事してるよりは100倍マシだ。

寒い。雪が冷たい。ワインを買いに街中まで出たのはいいが、どこを見渡してもカップルだらけで、その中を一人で歩くのは辛すぎた。さくさくと雪を踏み締める音さえ虚しく感じる。いい加減、私もクリスマスを一緒に過ごす相手が欲しい。そんなことを考えながら家に向かっていると、玄関先に人影が見えた。誰かがしゃがみ込んでいる。誰だろう、とそろそろと近付いて行くと、私の足音に俯いていた顔が上がった。

「遅ぇ」

突き刺さる鋭い目付き。リヴァイだ。まさかの人物に胸が大きく鳴る。長い時間待っていたのか、リヴァイの頭に雪が積もり、白くなっていた。

「どうしたの?」
「・・・エルヴィンから、酒を貰った」

持ち上げた袋の中には大量の酒。それも、パッと見ただけでも分かるほどの上等な酒だ。私と一緒に飲もうと、こんなになるまで待っていてくれたのか。頭の雪をはらうリヴァイを見て、じわじわと胸が熱くなっていく。

「どうせ、いつも安い酒しか飲んでねぇだろ?」
「失礼なこと言うな、馬鹿リヴァイ」
「とりあえず、さっさと鍵開けろ。さみぃ」

鼻をすするリヴァイに慌ててポケットに手を突っ込んだ。・・・そういえば、リヴァイを家に入れたことはあるけれど、2人きりは初めてだ。しかも、今日は聖なる夜。ムード満点のホワイトクリスマス。

「オイ、何やってる。早くしろ」
「ちょっと、待って、」

やばい、急に緊張してきた。ガチャガチャと上手く鍵が回らない。そんな私を見兼ねたリヴァイが鍵を奪ってきた。触れる冷たい手。跳ね上がる心臓。

「・・・オイ、なまえ」
「な、なに?」
「顔が赤いぞ」

口元を吊り上げるリヴァイに、目を見開いた。その余裕の笑みにわなわなと体が震える。

「さ、さむいから赤くなってるだけ!!!」

自分でも苦し紛れな言い訳だとは思う。ふぅんと唸り、見つめてくるリヴァイから顔を逸らした。

「・・・ああ、今日は帰らねぇからな」
「は!?」
「こんな雪の中、帰るの面倒癖ぇだろうが」
「まあ、それもそうだけど。・・・でも、」
「安心しろ。何もしねぇよ」
「さ、されたら困るよ!!!」
「する気も起きねぇ」
「それはそれで、ムカつくな!」

いつも通りのふざけたやり取り。だけど、コートを脱ぐリヴァイの後ろ姿に胸の鼓動は速さを増すばかりだ。一人で過ごす筈だったクリスマス。今、目の前にはリヴァイがいる。

「・・・何を見つめてる。誘ってんのか?」
「お願いだから、もう止めてよ!」

振り返りながら、くつくつと笑うリヴァイを精一杯睨み付けた。私と一緒に過ごしたいから来た癖に・・・!なんて言ったらリヴァイはどんな顔をするだろう。カチャカチャと2人分のグラスを用意しながら、気付くと自然と口許が緩んでしまっていた。

何かが起きそうな、そんな予感がする今年のクリスマス。



お返事(^ω^)




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