「明日、何時集合だっけ?」

ベッドから起き上がり、シャツのボタンを閉め始めるなまえ。ついさっきまで体を重ねていたというのに、まるで何事も無かったかのような素っ気ない態度だ。なまえが俺に対し、仲間以上の感情を持っていないのは初めからだが、眉を顰めずにはいられない。

「...7時だ」
「うわ、絶対寝坊しそう」

このまま泊まって行った方がいいかも、となまえが再びベッドに潜り込んできた。なまえが泊まって行くことは、ほとんどない。甘い余韻に浸る暇もなく、行為が終わればすぐに部屋を後にしていた。そんななまえが、今、俺の腕を枕にし、ぴったりと寄り添っている。その新鮮な感覚に、まるで本当の恋人のような錯覚に陥った。馬鹿な話だ。

街で女を買うよりはいいか、とそんな軽い気持ちで始まったこの関係を今では後悔している。互いに性欲を満たすだけの道具でしかなかった筈なのに、俺はいつしかなまえを愛してしまっていた。

「...なあ、なまえ、」
「...んー、なに?」
「このまま、ここに居たらどうだ?」

俺の言葉にうとうとしていたなまえの瞼がぱっと開いたかと思えば、直ぐに眉間に皺を寄せ、怪訝な顔で見つめてきた。...ああ、やっぱりか。そうだろうとは思っていたが、その表情を見て確信した。もし、俺の気持ちになまえが気付けば、この関係は終わる。

「...一緒に住めば、毎日寝れるだろ」
「...なーんだ、びっくりしたぁ。てっきり、俺の女になれって意味かと思ったよ」

息が詰まりそうだ。安堵の溜息を吐くなまえにも、本当の気持ちを悟られないように誤魔化す自分にも。

「ふふ、なーに?毎日寝たいだなんて、リヴァイ、発情期?」
「...うるせえ」
「明日、早いけどもう一回しよっか?」

このまま関係を続けていれば、俺に対し、少しでも情が湧くだろうか。分からない。先が見えない関係に区切りをつけた方が利口なのかもしれない。だが、俺と関係が終われば、なまえは別の男を探すだろう。他の男に抱かれる姿を想像しただけで身体中が燃えるように熱くなっていく。無理だ。なまえを手放したくない。例え、身体だけの関係でもだ。

「...誘ったのはてめぇだぞ」

覆い被さり、噛み付くように唇を塞いだ。抱いた後に残るのは、虚しさだけだと分かっているのに、止められない。




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