部屋を開ける前から、かすかに漂ってくるタバコの匂い。 それは、あいつが居ることを意味していた。 ガチャリとドアを開けると、窓際に立ち、外を眺めながらタバコを吸っているアイルの姿があった。 「あ、おかえりー」 「…勝手に入ってんじゃねぇよ」 俺は、アイルの手からタバコを取り上げると灰皿に押し付けた。 「あー!もったいない!」 「だったら、自分の部屋で吸え」 「やだ」 ここから見える景色が最高なんだよ、とアイルは言うが、それは口実だということは前から分かっていた。 「しかもさ、吸うなとか言うくせに、いつも灰皿キレイにしてくれて「風で灰が飛んで、書類が汚れるからだ」 ほんと素直じゃないね、と言って笑うアイルにそれはてめぇだろ、と胸元を引っ張り、唇を深く重ね合わせた。 「……苦い」 「…突然キスしといて、なによ」 「よくこんなの吸えるな」 「慣れるとやめられなくなるよ」 試しにもう1回してみる?と、今度はアイルの方から唇を重ねてきた。 |