「コーヒー」 兵長が当たり前のように私にコップを差し出す。 たまには自分で淹れろよ、と言いたい所だが、怖くて言えるはずがありません。 「ブラックな」 何百回あなたにコーヒーを淹れたと思ってるんですか?そんなの言われなくても分かってます。 コップを受け取り、給湯室へ向かった。 そうだ!いいこと考えた!兵長のコーヒーに砂糖をいっぱい入れてやろう! 「1ぱーい、2はーい、3ばーい、ふふっ」 やばい、楽しすぎる。 もし兵長に責められたらエレンのせいにしておけばいいし(酷い)、何よりこれを飲んだ時の兵長の顔が楽しみすぎる! 「日頃の恨みじゃ!」 「誰に対してのだ?」 ハッ! 最後の5杯目を淹れた瞬間、後ろから低いドスのきいた声が聞こえた。 …こんな声出せるのは、リヴァイ兵長しかいない! 絶対絶命大ピンチだ! 見られたよ、エレンのせいにできないよ、ああもう駄目だああぁぁ 「オイ、アイル」 「…は、はい」 「それ、お前が飲め」 「いやこれ兵長のコップですし、」 「いいから飲め」 今すぐここでな、と兵長は私を脅してくる。 とにかく目付きがヤバい。巨人だって逃げ出すレベル。 …うん、諦めよう。 私は砂糖たっぷりのコーヒーを一気に飲み干した。 「うえぇぇ」 溶けきれてない砂糖が口に残り、ジャリジャリする。 こんな不味いコーヒーを作った奴は誰だ! …畜生、私だった! 「お前、これを俺に飲ませるつもりだったのか?」 「い、いえ!滅相もございません!」 「はっ、まあいい。そのコップは処分しておけ」 酷っ!洗えばいいじゃん!私はバイ菌かっ! ブーツをカツカツ鳴らし、部屋に戻っていく兵長に、ボソッと『潔癖兵長』と悪口を言ってやった。 今の私には、これが限界です。 |