エルヴィンの口から、巨人が一斉に街を目指し始めたと聞き、俺の中ですぅっと血の気が引くのを感じた。急いで馬に乗ると、一気に街を目指した。急がないとやべぇ、街にはアイルがいる。

「この街は私に任せときなさい!」

俺が壁外に出る度に、そう言って見送るアイル。あいつは今、駐屯兵団の精鋭部隊にいる。訓練兵の頃からの付き合いで、あいつの力量は分かっていた。が、あいつが巨人の餌になるはずなんかねぇ、と思う一方で、良くない事が頭にチラつく。精鋭部隊なら後衛部か、いや、あいつなら絶対に自ら前衛部に行くはずだ。

着いてみれば、変わり果てた街並みに俺は息を飲んだ。転がる死体の中にあいつの姿がないことを祈った。俺は、近くの巨人を殺しながらアイルの姿を探し続ける。

「リヴァイ!!!!」

屋根の上から、俺の名を呼ぶアイルが見えた。急いでアイルの元へと向かう。

「ハァ…、駆けつけてくれたの?」

アイルの息遣いが荒い。両手に持っている剣は血だらけだった。ふと、シャツが真っ赤に染まっていることに気が付いた俺は、目を見開いた。

「おまえっ……」
「あ、ああ。大丈夫。巨人の血だよ」

こんなに巨人殺したの初めてだから、疲れちゃったと言うアイルに俺は軽く頭を叩いた。

「いてっ!」
「紛らわしいんだよ、馬鹿が」
「あははっ、ごめんごめん」

急いで来てくれたんでしょ?と俺の額から流れる汗をハンカチで拭くアイル。その手がカタカタと震えていることに気付いた俺は、腕を掴み、抱き寄せた。

「……心配した」

アイルの暖かい感触に、ハァっと大きな溜め息が出た。

「………本当はね、凄く怖かった」
「ああ」
「初めて、死を考えた」

そう言って、ぎゅうっと抱き締め返してくるアイルを、心の底から失いたくないと思った。

来てくれてありがとう、と体を震わせながら呟くアイルに何も言わず、頭をポンと撫でてやる。

「はぁ、……よし!」

俺から離れて、自分の頬をパァンと叩いた。

「さっさと片付けよう!街を守らなきゃ!」

スイッチを切り替えたのか、アイルの顔付きが変わった。

「ああ。とりあえず、俺を援護しろ」
「了解!」

行くぞ、とアイルに声を掛け、走り出した。いつも以上に巨人をぶっ殺さなきゃ気が済まねぇ。震えるアイルを初めて見た俺は、早速見付けた1体の巨人を仕留めながら、そう思った。



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