リヴァイの部屋から女が出て行く。泣いているということは、きっと振られたのだろう。コンコン、とノックをし、中に入るといつも以上に眉間に皺を寄せたリヴァイがいた。

「また振ったの?」
「……うるせぇな」
「今回はどのくらい続いた?」
「…………」

その問いに答えないところをみると、今回も1ヶ月と持たなかったのだろう。それなら付き合わなければいいのに、と思うが続かない理由は私にはなんとなく分かっていた。

私はリヴァイに告白され、振ったことがある。暴行された過去がある私には、“男と付き合う”なんて無理な話だった。少し手が触れたり、肩を叩かれたりする分には平気だが、抱き締められたり、それ以上の事は想像するだけでも鳥肌が立った。彼の事は、好きだった。でも、「何もせず、ただずっと隣に居て欲しい」なんてそんな勝手な事は言えるはずがなかった。暴行された過去を知られたくない私は、「死んだ昔の彼が忘れられない」と、適当な理由をつけて、振ったのだ。

リヴァイが付き合う女は、みんな私と似た髪型や背格好をしていることに気付いたのは、つい最近だった。私が忘れられなくて、そういう女を選んでいるのだろうか。私だと思って、キスしたり、抱いたりしているのだろうか。

「…はい、書類」
「…ああ」

書類に目を通すリヴァイ。その整った顔立ちを見て、彼を振る女なんて、私くらいだ、と思った。

「…なあ、アイル」
「なに?」

リヴァイが机の上にパサリと書類を置き、何か言いたげに、私を見つめる。

「……なんでもない」
「…そう」

はぁ、と深く溜め息を吐き、また書類に目を通し始めるリヴァイに、深く聞くことはしなかった。言われることは、1つだけだと思ったから。そんな彼を見て、私が彼の欲望に応えてあげることが出来ればいいのに、と本気で思った。でも、実際はどうしてあげることも出来ない。彼が好きなのに。そう思うと、胸が苦しくて苦しくて仕方がなかった。



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