僕は、昴兄さんのことが好きだ。

でも、とてもじゃないけどこの気持ちを伝えるなんて僕には無理だと思う。

僕のことなんて、見ていないって知っているから。

僕が笑ったって、泣いたって、きっと興味すら持たないだろう。

何かが崩れ落ちてゆく音が心の奥から聴こえてきて恐いんだ。

「昴兄さん…」

僕が今、あなたのことを好きだと言っても、きっと…。

「祈織?どうした、今呼ばなかったか?」

「あ…ううん。何でもないんだ。ごめんね、用もないのに呼んだりして。」

「…祈織はいつもそうだな。自分のことは後回しで、相手の気持ちを優先する。」

昴兄さんの手が僕の頬に触れたとき、僕は思わず目をぎゅっと瞑った。

「…だって…僕の気持ちを昴兄さんが知ったら、きっと僕を軽蔑するよ…っ」

「…軽蔑なんてしない。俺は祈織の心の中が見たい。もっと祈織のことを解ってやりたいんだ。」

昴兄さんの真っ直ぐな瞳に見つめられ、僕は勇気を振り絞って昴兄さんに抱きついた。

「…祈織?」

「…僕は…昴兄さんのことが好きなんだ…でも、昴兄さんに嫌われたくなくて…ずっと言えなかったんだ。」

「どうして、俺が祈織のことを嫌わなきゃいけないんだよ。」

僕は昴兄さんの言葉に驚き、思わず抱きついたままの体制で顔だけ上げ昴兄さんを見つめた。

「だって…男相手にこんな気持ち抱くなんて…おかしいでしょ?」

「そんなことはない。俺だって、今こうして祈織に抱きつかれて、嬉しいっていうか…変な気分になってるしな。」

嘘みたいな昴兄さんの言葉に、僕は思わず昴兄さんを押し倒していた。

「昴兄さん…好きだよ。」

「…俺も、祈織が好きだ。」

昴兄さんの薄い桜色の唇に引き寄せられるように唇を重ねると、昴兄さんは小さく身を捩らせながら応えてくれた。

想いというものは、伝えなければ何にもならない。

そんな当たり前なことを僕は解っていなかったのかもしれない。

昴兄さんを好きになって初めて、僕は気持ちを伝えることの大切さを知った――。
崩れ落ちる音がした

(もう何も恐いものなんてない。)

end.

なんか祈織が受け受けしい感じに…一応、祈織×昴なんですよ…!


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