棗×昴
俺は、昴の何を見ていたんだろう。
こんなに昴の事を目で追っていたというのに
昴が追い詰められている事…俺は、気付けなかった。
でも、次からは守らせてほしい。
俺は…昴を守る為なら、何だってするよ。
昴以上に大切なものなんて、何もないから―――。
それはほんの数時間前の夜のこと――
仕事帰りの車の中で信号待ちをしていた俺は、車のすぐ横を猛ダッシュで駆けていく昴を見つけた。
「昴?…あいつ、何であんなに全力疾走してるんだ…?…っ…!まさか…追いかけられているのか?」
俺は車を強引にUターンさせ、昴を追いかけた。
車で追いかけているのに、昴は数百メートル先に居る。
追いかけていると、昴が躓いて派手に転んだ。そして、男はその隙を狙い昴を抱き抱えると建物と建物の隙間に入っていく。
俺はためらうことなく車を道路脇に路駐させ車から降りると、全速力で昴と男の元へ向かった。
「んぁっ…!は、ぁ…ん、嫌だっ…!なつ兄…助けて…っ!」
「僕に触れられている時に…他の男の名前呼ぶなんて…イイ度胸してるね?そういう正直なところも、愛してるよ…?ねえ…僕だってずっと、昴くんのことを見ていたんだよ…?」
「俺は知らないっ…おまえなんか…嫌いだ…!!」
乱れた服、昴自身に当てられた男の手…勃起しかけている昴自身…。
あられもない昴の姿を目の当たりにし、俺の身体は怒りと嫉妬で小刻みに震えた。
「…昴に触るな!昴から…離れろっ!」
気付くと俺は、自分でもびっくりするくらい低い声で叫んでいた。
男が驚いて昴から手を離した隙に、昴に駆け寄り昴の身体をギュッと抱き締める。
「なつ、兄…!?どうして、ここに…?」
俺は昴に自分の着ていたコートを羽織らせると、昴の頬を撫でた。
「…立てるか?昴。とりあえず、これ、着てろ。…おまえ…今度昴にこんな事してみろ。病院送りにしてやるからな。」
「まさか…昴くんの声が聴こえていたっていうの…?愛の力とでもいうつもりなの…。」
男は、それだけ呟くと重い足取りで俺達の前から姿を消した。
路駐していた車は、数分しか経っていなかったからかそのままの状態で停まっていて、俺は昴を助手席に乗せると昴の唇に優しくキスをした。
昴の唇は震えていて、俺の胸にやり場のない切なさが広がる。
昴はきっと、俺に余計な心配をかけたくなくて…それで、一人で背負い込んでいたんだろう。
こういう時に頼ってもらえないって、結構キツイな…昴の方がもっと辛かったんだろうけど…。
「…昴…守ってやれなくて、ごめんな…ずっと、ストーカーされてたんだろ?気付いてやれなくて…ごめん…。」
「…俺は大丈夫だよ。なつ兄が…助けてくれたから……あいつ、俺が公園でバスケの練習してるの、ずっと見てたらしくて…一度、手紙貰って…それ受け取った時くらいから、毎日つきまとわれていたんだ。きっと、勘違いさせちゃったんだと思う。」
「…そうか…。でも、何にせよ俺の昴につきまとった挙句、レイプ紛いな事をするなんて、許せない。さっき…少し感じてただろ?仕方ないと思ったけど…でも、やっぱり悔しかったんだ。俺以外にそんな可愛い声聴かせないで欲しかった…ごめん、変な嫉妬して…。」
「…なつ兄……そう思うなら…今晩、なつ兄の部屋に泊めて…?…身体…気持ち悪いんだ…消毒、してよ…なつ兄…っ…。」
大粒の涙をぽろぽろと溢しながら、俺の左手を握り締める昴。俺はその手を力いっぱい握り返すと、マンションまで車を走らせた。
昴を部屋に連れ込むと、昴がギュッと俺に抱き付いてきた。
俺は昴を優しく抱き返すと、昴は不安気に睫毛を揺らしながら呟いた。
「なつ兄……俺…さっきはああ言ったけど…本当は…全然大丈夫なんかじゃないんだ…っ…なつ兄が来てくれなかったら、今頃……そう考えると、怖くて…っ…。」
昴の瞳から再び涙が溢れ出す。俺はその滴を舌で何度も舐め取ると、昴はびくんと身体を揺らして甘い声を漏らした。
「昴……好きだ…。」
昴の鎖骨に優しくキスを落とし、昴の身体をベッドにそっと押し倒すと、昴はギュッと目を瞑った。
昴の頬に手を添え、額にキスを落とす。ゆっくりと開けられる瞼の奥にある瞳は不安色に染まっていて、俺は切なくなった。
「…なつ、兄……?」
「…昴。俺が、昴に触ってる…誰よりも愛しい、昴の身体に触れてるんだ…だから、怖がる事なんてないから…俺を信じて…?昴…。」
昴の瞳からまた涙が流れ落ちる。俺は昴の目尻に優しく口付けると、昴の顔中にキスをしていく。
「んっ…ふふ、くすぐったいよ…なつ兄…ん、んん…っ…ふ、ぁ…は、ぁっ…ん…っ……なつ兄…っ…。」
咥内を貪り尽くすように口付けると、昴の口から色っぽい吐息が漏れ出した。
不謹慎だけど…いつもより儚げな昴の表情はとても妖艶で…俺は興奮を抑える事が出来なかった。
昴の乳首を舌で舐め廻すと、ぴくんと身体を震わせ口元に手を当てる昴。
「…昴…もっと声、聴かせて?昴の可愛い声が聴きたい…。」
「…ぁっ…んぁ、なつ兄……はぅ、ん…んん…ぁんっ…。」
昴の履いているジャージを下着ごと脱がすと、興奮した昴自身がぴょんと顔を出した。
「…ここに…あいつは触れたんだよな。…許せそうにないな、俺…。」
そっと先端に指を這わせると、昴自身はぴくっと震え先端からは先走りの滴が溢れ出してくる。
「そ、そんな風に触れられてない…!ちょっと掴まれただけ…だし…その…っ…。」
昴の頬が赤く染まっていくのが可愛くて、俺は昴の髪を優しく梳くと昴自身にキスをした。
「…ここにキスできるのは、俺だけだよな?」
「んっ、ひゃぁ…!ん、ぁ…当たり前だろ…っ…俺は結構…一途なんだからな…!」
「…良かった。昴…好きだよ。ずっと…ずっと、昴の傍に居るから…。」
俺はそう呟くと昴自身を口に含み、舌を遣いじゅぽじゅぽと艶めかしい水音を立て舐めていく。
裏筋を舐めると、昴は身体をビクビクと震わせ、俺の顔めがけて熱い精を放った。
「っっ…!ごっ…ごめん、なつ兄…!大丈夫…?」
俺は顔にかかった昴の精液を舐めると、昴の髪を優しく撫でた。
「…大丈夫だよ。でも…俺、昴に舐めて欲しい。昴が自分の精液を舐める姿を、間近で見てみたい…。」
昴の耳元で甘く囁くと、昴は顔を真っ赤にさせながらも弱々しく頷き、そっと俺の顔に舌を這わせ始めた。
至近距離で見る昴の顔はとても綺麗で、俺は目が離せなくなった。
四つん這いで自分の放った精液を一生懸命舐めている姿は何だかすごくエロくて…俺の興奮は高まっていった。
「ん…ふ、んぅ…なつ、兄……あんまり、じっと見られたら恥ずかしいんだけど…?」
「…悪い、昴…!俺…もう、我慢できねえ…っ…。」
俺は昴の身体を押し仰向けにさせると、脚を大きく開かせ濡れてヒクヒクと蠢いている昴の秘部に指を二本入れグチュグチュと掻き回した。
「…ひゃ、ぁっ…んぁ、は、ぁっ…ぁんっ…!なつ、にい…も、指…いい、から…中に来て…?」
濡れた瞳で誘うように俺自身にそっと指を這わせてくる昴。
俺は思わず喉を鳴らすと、昴の秘部に熱く昂ぶった自身を宛がうとゆっくりと腰を沈めていった。
「…昴…!愛してる…昴…すば、る…っ!ん…。」
「んん…は、ぁっ…あんっ…ひぁっ、んぁ…っ!なつ、兄…っ…ぁんっ…俺も…愛してるよ…ぁっ…!」
全部入ると、昴の唇にキスを落とした。そして、ゆっくりと腰を動かし始める。
「っ…昴…!昴…っ…俺…ずっと、おまえの事…守るからな…っ!」
「あぁっ…んぁっ、は、ぁ…んっ…あ、ぁっ…なつ兄…!守ってね…ずっと、ずっと…俺だけを守って…っ!」
最奥を何度も突き上げると、昴は生理的な涙をぽろぽろと溢し、俺の首にしがみつき切なげな嬌声を上げ自身から半透明な蜜を放った。
その数秒後、俺も昴の中に欲望の証を注ぎ込むと、昴を強く抱き締めた。昴は俺の胸に頬を寄せると、目線だけあげて俺を優しく見つめた。
なあ、昴?
昴の不安を取り除けるのは、俺だけだって思ってもいい?
昴を守れるのは、俺だけだって思ってもいい?
俺だけに頼ってほしい
俺だけに甘えてほしい
俺だけの前で泣いてほしい
俺だけを受け入れてほしい
昴を守るのは、いつだって俺じゃなきゃ嫌だよ。
もう、二度と辛い思いをさせたくないから…
だから…どうか、昴だけを守らせてください―――。
どうかきみを守らせて
(ずっとずっと、君だけを守りたいんだ)
end.
木葉様より、昴にストーカーが居てそれを棗が解決するお話が読みたいとのリクを頂きましたので、書いてみました。昴を助ける棗っていうシチュ、萌えますね!棗が昴に見せる優しい笑顔が好きです。リクエストありがとうございました。皆さんに少しでも気に入って頂けたら嬉しいです。他にも多数リクエストお寄せ頂いています。ありがとうございます。只今執筆中ですので、今しばらくお待ち願います。
素敵なお題はアングロノルマン様よりお借り致しました。ありがとうございました。
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