棗×梓 R18
※棗→梓と言った方が正しいかもしれません。
もう、ずっと・・・ずっと前から。
俺は梓の事だけしか見ていなかった。
梓が椿の事だけしか見ていなくても、俺は構わないと思っていた。
梓の出来るだけ近くに居て、見守って居ようって・・・そう思っていた。
けど・・・そろそろ、限界かもしれない。
梓の全てが欲しいと、無意識に想ってしまう自分が確かに居るから――。
「ひどい天気だな・・・梓、ちゃんと温かくしてればいいけど・・・。」
外はドシャ降りで、今にも雷が落ちるんじゃないかと思うくらいに灰色の雲が広がっていた。
「・・・梓?おまえ・・・こんな時間にこんなトコで、何してるんだ?」
駆け足でマンションに帰ると、玄関の前に梓の姿を見つけた。
こんなに雨が降っているのに、傘も差さずに立ち尽くす梓に駆け寄るとそっと梓の頬に触れる。
梓は俺の服の裾を掴むと、何も言わずに抱きついてきた。
「梓・・・とりあえず、中、入れよ。風邪引いたら・・・困るだろ?」
何が何だか分からないまま、気付くと俺は梓を部屋に入れていた。
淹れ立てのコーヒーを梓に差し出すと、梓はそっとカップに口を付けた。
「ん・・・美味しい。棗・・・突然来たりして、ごめんね。」
「いや・・・それは全然構わないけど・・・何か、あったのか?」
梓の顔を覗き込むと、梓の瞳は潤んでいて・・・俺の心臓はドクンと跳ね上がった。
「・・・棗に逢いたかったから来たんだよ。棗の声が・・・聴きたかった。」
そんな濡れた格好で、そんな事言うなよ・・・俺を誘惑するなよ。
梓が好きなのは・・・椿なんだろ?
そう言いたいのに、気持ちとは裏腹な言葉が俺の口から零れていく。
「・・・梓・・・そんな事言われたら、俺・・・我慢できなくなる。俺は・・・梓の事が、好きだから・・・。」
そっと梓の唇をなぞると、梓は身体を震わせて甘い声を漏らした。
「ん・・・っ・・・我慢なんて・・・しなくてもいいよ?僕に触れて・・・?棗・・・。」
ずっと触れたかったその透き通った肌にそっと指先で触れると、梓は濡れた瞳で俺を見つめた。
梓をベッドに押し倒すと、どちらからともなく唇を重ねた。
舌を絡めると、梓の腕が俺の背中に廻され、俺は夢中で梓の舌を追った。
「梓・・・本当にいいのか?俺・・・梓が泣くところは、見たくないからな?」
「・・・ふふ、泣かないよ。僕から求めたんだもん・・・抱いてくれない方が傷つくよ?」
そう言って笑う梓につられて微笑み返すと、梓が俺の服に手を掛け脱がし始めた。
「ちょ、梓?どうしたんだよ・・・待ちきれないのか?」
「うん・・・早く、棗が欲しい・・・。」
「・・・!梓・・・っ。」
どうしていきなり梓が俺のところに来たのか。どうして椿じゃなく、俺を求めているのか。
疑問はいくつも浮かんだけど、そんな事よりも今は梓を満たしてやりたいと・・・心からそう思った。
梓の服を脱がしながら、身体中に赤い華を咲かせていくと梓は身を捩らせて悩ましい声を上げた。
「ん・・・ぁ、んん・・・棗・・・。」
「梓・・・そんな声で名前呼ぶなよ・・・歯止めが利かなくなっちまう・・・。」
「・・・僕は・・・確かめに来たんだ。棗の本当の気持ちを・・・。」
梓は俺の手を握り締め、優しい声で話し出す。
迷いの無い真っ直ぐな瞳で俺を見つめる梓に、俺の胸は震えた。
「・・・梓。おまえ・・・気付いていたのか?」
「・・・とっくの昔にね。でも・・・僕は、椿の事が好きで仕方なかった。だから僕は・・・棗の気持ちから逃げたんだ。」
解っていた。全部、解っていたよ。それでも俺は・・・梓への想いを捨てる事が出来なかったんだ。
梓を奪う事も、梓を諦める事も出来ないまま・・・俺は逃げるようにあのマンションを出た。
「俺は・・・それでも構わなかったよ。梓が幸せなら・・・それが俺の幸せだから。」
「棗は・・・どうしてそんなに優しいの?」
梓の瞳から大粒の涙が溢れ、俺はそれを指で拭うと梓の耳元で囁く。
「・・・梓の事を、愛しているから・・・どんな時でも、梓の事を想っているから・・・。」
「棗・・・泣かないで?もうこれ以上、僕のために苦しまないで・・・。」
「・・・梓。今夜だけでいいから・・・俺を好きになってくれないか・・・。今夜だけは・・・俺だけを見ていて欲しい。」
俺の瞳から溢れた涙が梓の頬を濡らしていく。梓は返事の代わりに、優しい微笑みをくれた。
少し汗ばんでいる梓の身体にそっと指を滑らせていく。乳首を弄ると、梓は甘い声を上げた。
「・・・んっ・・・ぁ、棗・・・・・・あ・・・!」
「梓・・・俺に触られるの、嫌じゃないか・・・?」
ふと不安になって問い掛けると、梓は力なく微笑み俺の手を握った。
「嫌なわけないでしょ・・・?もっと僕に触れていいから・・・。棗を感じさせて・・・?」
乳首に舌を這わせながら、梓の昂ぶっている中心に触れやんわりと握る。
ヒクヒクと震える自身からは半透明な蜜が流れていて、俺の理性は飛びそうになった。
「梓の・・・かなりトロトロになってるな・・・。ついさっき初めて弄ったのに・・・。梓・・・可愛い。」
「やっ・・・ん・・・言わないで・・・恥ずかしいよ・・・っ!」
梓は頬を真っ赤に染めながら軽く俺を睨んできた。そんな目・・・逆効果だよ、梓。
「恥ずかしい方が・・・興奮するだろ?ほら・・・俺のも触って?梓・・・。」
梓の手を掴みそっと自身に触れさせると、梓は遠慮がちに手を動かしてきた。
「・・・棗のがこんなに大きいなんて・・・知らなかった・・・。」
「・・・っ、梓・・・あんまり煽るなよ・・・一瞬イキそうになっただろ・・・?」
「・・・僕、棗の事・・・もっと気持ちよくさせたいな・・・。」
梓はどこか儚げな表情を見せると、俺の股間に顔を埋め俺自身を口に含んだ。
ちゅぱちゅぱと艶かしい水音を立てながら、梓が俺自身を一生懸命舐めている。
そう思うだけで、思考回路がショートするくらいに興奮してしまう。
「んっ・・・は、ぁ・・・あず、さ・・・っ・・・。」
「気持ちいい・・・?棗・・・。」
俺のを咥えたまま目線だけを俺に向ける梓に、俺は我慢する事が出来ずに梓の咥内に熱い欲を放出してしまった。
「っっ・・・!・・・はぁ・・・は、梓・・・ごめん、大丈夫か?」
「・・・うん。大丈夫、美味しかったよ。」
満足そうに笑う梓に、俺は頬がかあっと熱くなるのを感じた。
梓が俺の精液を飲んでくれるなんて・・・恥ずかしさと嬉しさで、どうにかなりそうだ・・・。
「・・・続き、してもいいか?」
「・・・うん。僕を棗でいっぱいにして・・・?」
梓の濡れた瞳に吸い寄せられるように、俺は梓の濡れてトロトロになった秘部に自分の昂ぶった自身を宛がうと一気に貫いた。
「あっ・・・!あっ・・・んぁっ、ひ、ぁっ・・・はぅ、ん・・・あっ・・・棗・・・棗・・・!」
「っ・・・梓・・・好きだ・・・!梓・・・梓・・・あず、さ・・・っ・・・!」
「あぁっ・・・ん、ぁっ・・・!棗・・・も、イッちゃ・・・あぁっ・・・あっ・・・んぁっ・・・――ッ!」
身体をビクビクと震わせながら、梓は天井めがけて欲を吐き出した。
その後すぐに、俺も梓の中に熱い精を放った。
行為が終わると、途端にどうしようもない切なさに襲われ、俺は梓を強く抱き締めた。
梓もまた・・・切なげな表情で俺に抱きついてきた。
梓の温もりが俺を切なくさせる。明日の朝には、梓はきっとこの部屋には居ないから。
梓は、一度も俺を好きだと言わなかった。言わなかったんじゃなくて、言えなかったのかもしれない。
梓はずるい。俺にこんなにも切ない思い出を残して、去っていくのだから。
頭では、そう思っている筈なのに。それでもまだ・・・この胸から梓が離れてくれない。
この胸が、梓を諦めることを拒んでいる。この胸が、梓を好きでいたいと叫んでいる。
たとえ、この恋が実ることは永遠にないとしても・・・この胸から梓を消すなんて、俺には出来ない・・・。
どうしようもないくらい苦しいのに、それでもこの胸は梓への想いを次から次へと生み出してしまうんだ。
この胸が叫んでいる
(君が俺のことを忘れないで居てくれるなら、それだけでいい。)
end.
この話、書いている時は気に入っていたのですが、よく考えると梓が小悪魔みたいな感じにも見えますね。っていうか、完全に小悪魔かも(笑)皆さんに少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。
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