※現代パロ


こてん、彼の首が私の肩に落ちた。珍しく外で飲んで、珍しくこいつが酔って、珍しく甘えている、ああ本当に現実かわからないくらいに奇特なことだ。ザークシーズは戯れで人に引っ付くことが多いが本当に必要なときは頼らない。酔う、それだけでも自分の弱点になるかのように気を張っているのだ。だから本当に、酔って人に寄り掛かるなんてありえない、ありえないはずなのに今この、同棲している部屋で私の肩に乗っている暖かく丁度よく重たい頭は。この耳を首を擽るやわらかな髪は。いったい誰のものなのだろう。
そう取り留めなく思う私も大概酔っているのだ。ふわふわと、ああ、しあわせで、どうでもいい。

肩の毛玉が身じろぎをした。

「ん、レイム、さん」
「…なんだ」
「だいすきですよ」
「っ、いきなりだな」
「…いつも言っているじゃあないですか」
「それでも心臓にわるい……」
「あ、どきどきしたんですカァ?」

うれしいなあ、きみが私にときめいてくれるなんて。
そのまま すり。と肩に頬を何回も擦り付けられる。首と身体にしっかりと回された腕と指が熱い。アルコールのせいで普段は低い体温が私よりも上がっているのだ。私から近いところで眼が潤んでいる、なんて、精神衛生上良くない光景。

「……酔いすぎだぞ」
「えー?いつもとあんまり変わりませんけど?」
「酔ってるからそう思うんだ、馬鹿」
「私はきみが酔ってるんじゃないかと…顔、真っ赤ですヨ」
「それくらいわかっている」

そう。さっきから自覚しているのだ。酔っている。酔っている。酩酊した頭は同じことを繰り返す。ふわふわと心地好い。
そして、やはり、彼は艶めかしいのだ。

「……自覚がないのも困りものだな」
「一応、酔ってる自覚はありますよ」
「そうじゃない」
「じゃあなんですか……変な人ですね、きみは」
「お前と教授にだけは言われたくはない言葉だな」

冗談半分呆れ半分で返す。お前は世間一般には変人で、私の親友で、私の恋人で。いったい何個の肩書きがあるのだろうと脈絡なく考える。
だが、ぴたりと私の腕にはりついて笑った彼の唇はやはり美しく煽情的なのだ。だから、

「私は変なきみでも、すきですがねぇ」
「……」
「あれ、だんまりですか」
「…、少し、お前は黙っていろ」

だから、いけない。そうふわふわと頭が定義したころには、私は彼にくちづけていた。きゅうと瞳孔が縮むのが見える。私の顔に焦点を絞っているのだろうが些か距離が近い、近すぎる。
いったい私はなにを。
呆けたような顔の全体が見える位置にゆっくり身を引いた。ぱち、ぱち。ザクスが瞬きをして、そして唐突に笑い出した。

「だまっていろ、でキスなんて…気障ったらしい、どうしたんですか」
「……べつに何も」

まさかお前の唇に欲情したから、なんて言えるわけがないだろうと心中の居心地も悪く顔を背ける。

「顔が赤いですヨ」
「…酔っているからな」
「じゃあ、そういうことにしておいてあげます」

ほのり。赤く潤んだ眼が笑む。あ、あ。いったいどちらが酷く酔っているのだろうか。





眼の端の、
(恥と欲ときみ)

10.09.26

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