ひどく怖いものだと思った。欲に潤むような金の眼も、なにも考えられないような状態だろうに核心を突いた、そのやわやわとした声も。情欲を耐え切れなかったらしくにたどたどしく背筋を撫で上げる手も。

「お前は不器用なんだな」
「不器用なひとがヘタレをベッドに誘えますか?口さきにしろ手先にしろ、むしろ器用なほうかと思っていますが」
「いや、愛しかたを、愛されかたを、これしか知らないみたいだ」

子供は、餓鬼は、こわいものだ。無邪気にこちらの一番触れられたくないものを引きずり出して次の瞬間には平気な顔で菓子を頬張ったりする。大人はそれを何も気にしなかった風を装って、内心に靄をかかえて微笑しなければならないのだ。いつも。そうすれば餓鬼はもう後は気にしないで菓子に夢中になる。そういうものだ。
だが目の前の彼は、どうにも餓鬼と掃いて捨てるには成長しすぎていた。いつもならばいい、12歳程度の精神年齢のくせに変なときだけ鋭い、しぶとい。
射るような。そう形容するのが正しい金と赤の光が空中でかちあった。

「ああ、そうですねェ。確かに他は行為のなかで少しあればいいものなのでどうでもいい。いりませんカラ」
「なんで、だ?」
「君のような餓鬼を相手にするからですヨ、若い子は愛の形がわかりやすくて過激なのがお好みでしょう?だいたいこれ以外だと生温くてネ」
「そんなに快楽がすきか?」
「いえ、生温いのは優しすぎるので嫌だというだけです」
「…何が言いたい」
「何も。……さァ、折角この私が誘っているんだ、君も少しは男気とやらをみせてみなさいよ」

はぐらかせ。追及に心は安定を欠く。嗚呼、餓鬼の癖に。と嘆息したいのを堪えてにこりと笑ってみせた。その笑みに背中をするすると辿っていた掌がひた。と肩甲骨の間で静止する。

「……怖い、のか」
「、っ」

何故そうして踏み込む。どうして、そうやって金色の虹彩にゆらゆらと私の恐れを見せるのだ。
そうだ、私は怖い。罪人だという意識はいつまでもいつまでも形を変え纏わり付く。君たちの優しさは心地良いが、それでも罰を受けることもまた救いだ。優しく口づけられて抱きしめられて、そんな生温いものでは罰にならない、嬉しいだけ。それがまた罰を受けるべきと叫ぶ自らに還って。その矛盾は首を絞めてゆく。だから安直に、忘れてしまいたいから幸せで、くるしい方法を選んでいる。

「…違いますヨ、ただ」

(溺れ死にたいんです)

「きみが好きだから君が好みそうなやり方をとっているだけ、デス」

嘘を見透かすこどもの眼は、ひどくいたい。

「さあ、はやく。」

完結を語尾に滲ませた。それでも彼の眼は、金色の馬鹿正直な眼はとまっている。

「…」
「ギルバートくん、お願いだから」

きち、と襟を掴んだ。

「私を好きになるなら、どうか」

どうかお願いだから。

「殺したあとで」

すきになってください。
そうしないときっと。







つりあわない
(一体わたしは何処のマゾヒストだろう、)
(只の自己満足じゃあないか)


10.04.27

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