吸い込んだじゃりじゃりが
かつてだれかが撒いていった記憶の化石なら
わたしもここになにかを遺していこうとおもった

こびりついて滲んでる
深づめぎみの怪獣たち
“ときどきの淡いえいえんが”
妙な脚のかたちが

亡霊ぶってすきだと云ってくれよ
だれか積みあげて死体を見立ててくれよ
あの曲がりかどのとんがったところに
ぼやかされたふたりなど存在しないと誓ってくれよ
飼い慣らされた「だれか」など
しぬまで懐かなかったいぬのようなものだと
怒号でよるを砕いてくれよ

あなたのことばは
野生の星くずみたい
みがってに翅をばたつかせるところは
よるのあのひとたちに似ている
価値のないわたしのてあしに似ている

冬のしろい陽射しにまぶされたわたしたちは
「にがい」とわらいあって泣きたかっただけなのに
瞼を縫うしぐさがやさしい
この世に別れを切りだすあなたはやさしかった
つめたいほねで暖をとるわたしはさみしかった
なだらかに滑る戀の果つ
つみなひと
恥ぢらいのあまいのやんなる

「炎だ」
恨めしい花のざらざらしたこわねがみみたぶをひっ掻いて 飽きもせず「炎だ」と繰り返しゆびを指すあなたは振り払えどもう帰ってしまうじかんだ たくさんの御世辞と滲んだ慰めはしらずに用意されていた冗談たちにすり替えられて もうなんにも なんにも云えなくなってしまった うしろ姿のあなたはわたしをみえない幽霊のようにあしらいもせずここをあとにして 微かにおもたくなった呪いだけがわたしをすこしやさしいひとにしてくれる さみしいことばがこんなにもこわいことばなのだと 想像もできなかったころの倦んだわたしたちにしてくれる

夜吸い蜂の砂糖づけ
ほろめく淡い

ゆめのあとできずぐちに呪うみたい
ただれた恋いびとたち
おとは微かな燃やされたまふゆにかたちをかえて
わたしはあなたの死後のつてになる
まど硝子にぎんいろのわるぐち
ふちどられたどこかの骨の彫りはくっきりと深いから
それがあなただときづいてしまった
無惨な心中のあとで
がい骨に積雪を訊ねるおとなになってしまった

ペールグリーンの恋いびとたちになぞって
にどねのほねの柔なくぼみに謎謎
くまちゃんたべちゃったの
みしんで轢いちゃったの
こわいことしちゃったの
わたしはかたばみいろの浴室に歯をたてて
編むよるにいらなくなる
のこされた群衆にくびわをまいて
ノックのおとには気づかない

炎だ
あなたは蓋をしたらいい







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