「ねえ、ナマエ?トムってあなたの恋人なのかしら?」
「私たち、本当にトムの事が好きなの。」
「いえ、違うの……愛してるわ!」
「……ねえ、ナマエ。私たちのためと思って、」
"身を引いてくれないかしら?"
そう言われたのは、リドルの命令に従って禁書の棚に本を返しに行った帰りだった。態々近くの空き部屋に呼ばれた。
「…く」
「ナマエ?」
「…くっ……くははははっ!!君たちは面白いことを言うね?"ナマエはトムの恋人なの?""私たちのために身を引いてくれない?"…身の程を知れよ。なんで一人称が顔も名前も知らない女、しかも複数人でしか言葉を発することもできない女にのために、一人称が?……ああ、顔は知っていたな。マルフォイさんやブラックにも黄色い声を挙げていたねえ…?」
「…っ!」
「答えはノーだ」
震える手で杖を懐から出そうとする女たちよりも速く術をかける。
「無言呪文…!?」
「ご名答」
どこからともなく強風が吹き荒れ、彼女たちの肌を切り裂く。「一分後に止まるようにしておいた。頑張って防ぐんだな……クソビッチ」
気味の悪い音を立てて閉まるドアを横目に、スリザリンの談話室に戻ろうとしたときだった。
「…!」
「………」
「……リドル、居るんだな」
近くの別の空き部屋から、静かにリドルが現れた。面白そうに笑いながらこちらにくるリドル。ああ、見てたんだなとすぐに分かった。
「暇つぶしをありがとう」
「盗み見か?なぶってくれたら許す」
悲鳴をバックグラウンドミュージックに、一人称たちは談話室へと戻った。
LIST