無色とは
 

「アクロマさん」

「アクロマさんてば」

「……もう。風邪ひいちゃいますよ。」


いつもよりうんざりしたような声が頭上から聞こえる。それでもなんだか暖かくて居心地がいいから、もぞもぞと毛布にくるまった。


「こんなに丸くなって寝るなんて、ニャルマーみたい。…はじめて見たなぁ。遅くまで研究おつかれさまです。」



すこしだけ楽しそうな声色で話すのは部下のナマエだろう。この研究チームでは最年少なのに周りに負けず劣らずの優秀さを誇っている。
加えて愛想が良くて人懐こい。



「…あっ!アクロマさんが寝ていらっしゃる間にお散歩にでも行ってこよう」
「君の課題は終わったのかな?」
「あ、あああアクロマさん?!」


いつから起きていらっしゃったのですか?!と青くなっているナマエを横目に眼鏡を掛け直した。


「ニャルマーのくだりからかな」
「ごっごめんなさい!」
「いいですよ。それも君の長所ですから。」


煙が出そうなほど赤くなっている部下に 忙しいな と思いつつも、毛布を退けてファイルを整理する。


「あの」
「なにかな」
「アクロマ って、 無色 っていう意味ですよね」
「おや 意外」
「…。窓の外、ご覧になりました?」


ナマエがカーテンをすこし捲ると、辺り一面真っ白に雪が積もっていた。



「雪って、白い…ですね」
「そうですねえ」
「…無色って、なに色なんでしょうか」



不思議なことを言うやつがいたもんだ。



「誰にでも染められる色 なんじゃないのか?」


ガラにもなく微笑んでやれば、頬をうすい桃色にして固まった部下に、はやく研究に戻りなさいと諭す。
ドアをバタンと閉じてドタドタと走り去っていった部下に、自然と口角が緩む。

…からかいすぎたかな




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ちょっと昔のアクロマさん

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