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01


※平助視点の主→斎



「よう、総司!」



廊下を渡っていたら庭の隅の椅子に腰かけてだらけている総司を見つけた。



「ああ、なんだ、平助か。どうしたの?」



なんだってなんだよ。

失礼な物言いに突っ込もうとして止めた。

こいつと口論したところで勝てる筈ないし。



「別にどうもしねぇよ。暇持て余してっからぶらぶらしてただけ。総司は甲羅干しか?」



「ううん。見ての通りの人間観察だよ」



は、と俺の口から空気が漏れた。

どこが見ての通りなんだよ、わっかんねぇよ。

そう言ってやると、まぁね、なんて曖昧に笑う。



「暇なら平助もこっちおいでよ」



もうすぐ面白いものが通るから。

そう言って自分の隣を勧めるから、特に断る理由もなかったし、素直に従った。



「面白ぇもんって?」



「まぁ黙って見てなって。その内来るから」



そう言って静かに笑うと、総司は口をつぐむ。

俺も総司もどっちかっていうと普段から饒舌な方だから、二人並んで黙ってるなんて変な感じだ。

そっと隣を窺うと、ゆるい陽の光に目を細めている横顔が見えた。

その様子は、とても市中で恐れられている新選組一番組組長とは思えない。

なんつーか、でっかい猫みたいだ。

総司が猫だなんて、想像したってちっとも可愛くねぇけど、それでもやっぱりその姿は猫みたいだった。

いや、でっけぇし笑えない冗談言うし掴みどころないし神出鬼没だし、猫っつーよりは化け猫か。

うん、そっちの方がもっとしっくりくる。

主に邪悪さの面で。



「人の顔見ながらニヤつくのやめてくれる?気持ち悪いから」



いつの間にか盗み見てんのがバレてたらしい。

冴え冴えとした橄欖石を思わせる緑色の双眸が此方を見返していた。

悪ぃ、と言いかけてはたと思い留まる。

つーか気持ち悪ぃってなんだよ!



「ニヤついてなんかねーし!」



「ニヤついてた。自覚ないなんて、もっと気持――平助、見て。来たみたいだよ」



少し声を落として総司が早口に呟く。

その視線の先には、廊下を渡っていく土方さんの姿があった。



「……お前、また土方さんに何か悪戯仕掛けたんだろ。いい加減にしねぇと、あの人マジで怒り過ぎて死んじまうぜ?」



「人聞きの悪いこと言わないでよ。どうせ土方さんは斬っても斬っても死にゃしないんだから」



「斬っても斬ってもって……気持ち悪ぃこと言うなよな」



蛭みたいに切っても切っても再生し、増殖する土方さんを想像して、うすら寒くなった。

冗談じゃねぇ。



「総司お前土方さんを何だと「し、黙って」



俺を鋭く制した総司の目線は、恐ろしい程に真剣。

総司をそれほど真剣にさせる土方さんに一体何があるのか、黙って俺も廊下に視線を戻した。


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