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02 おきがえのじかん


「と……取り敢えずその着物をどうにかしましょう!」



半ば自分を励ますように大きな声でそう声を掛ける。

そうだ、いつまでも呆然としている場合じゃない。

いつもは隙のない動作で動き回っている皆さんが、ずるずると不器用に大きな着物を引き摺る姿も可愛いけれど、裾に蹴つまづいたら危ないし。



「屯所に子供用の着物とか――」



「ある訳ないでしょ?」



「そう、ですよね……」



にこやかに言い放った沖田さんは小さくなっても真っ黒い笑顔は健在。

ちょうどいい丈の着物がないなら――

顎に手を当て、皆さんを順繰りに見まわしながら考える。

土方さんと沖田さん、それに永倉さんは袴に合わせて丈の短い着物だから、それだけ着ればちょうどいい長さになると思う。

永倉さんの身長に比べて、着物の丈が短すぎる気もするけれど――ギリギリ犯罪は免れる長さだと思う。

平助くんは――ちょっと引き摺るかな?でも帯でなんとかなるよね。

問題は残りの二人だった。

斉藤さんの黒い着流しは、背丈が半分以下にまで縮んでしまった今、どうやったって着れるものじゃなかった。

逆に肋が見え隠れするくらいの丈しかない羽織姿だった原田さんは、着るものがない。

うーん、困った。



「お、おい。なんだよ皆して」



皆さんも同じ事を考えているようで、じっと原田さんを見つめながら唸っていた。

やっぱり一番の悩みの種は原田さんだよね。

そうだ!と手を打ちならした永倉さんがくるりとこちらを見遣る。



「千鶴ちゃんよ、取り敢えず隊服持って来てやってくれよ!」



「あ、はい!」



そうだ、その手があった。

私は慌てて浅葱色の羽織を取りに向かう。

隊服は隊服で、随分丈が長いけれど――着流しなんかよりも随分マシだもんね。

斉藤さんと原田さんにそれぞれの隊服を渡すと、皆さんが着替えている間に一旦広間を出る。

なんだかんだで随分昼餉の時間が遅くなってしまった。

戸口に置いていた冷えたお膳を下げる為に取り上げて、お勝手に向かった。


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