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06 桜餅:藤堂平助


(こ、今度こそ食べ過ぎた……)



夏氷にぱるふぇにと冷たい物を大量に頂いたので、私のお腹はたぷたぷを通り越してじゃぼんじゃぼんだった。

心なしか、お腹が痛い気もする。

夕立が来る前に洗濯物……と思いながらも、なかなか部屋から出られない。

というか、お腹が重くて起き上がれない。

ああ、もういい加減行かないと――

自分を叱咤して上体を起こしかけたら、襖の外から平助くんの声がした。

声と同時に襖が開く。



「千鶴、お前さ――って、調子悪いのか?!」



「え?あ、これは違――」



慌てて起き上がると、ちょっとうとうとしてただけで元気だと伝えた。

私の言葉に平助くんはちょっと呆れた顔になって笑う。



「なんだよ、びっくりしたじゃんかー」



まぁ、元気ならそれでいいんだけど。

にひひ、と笑う平助くんは手に持った包みをこちらに差し出す。

それを見て、ぎくりとする。

それは、さっき風間さんが持って来てくれた葛餅と同じ舟橋屋の包み。

その中には、可愛らしい桜餅が六つ入っていた。



「これ……」



「ほら、おまえこの前『冷菓が食べたい』って言ってただろ?」



確かに、このところ急に暑くなって「冷菓の恋しい季節になりましたね」なんていう話をしたような気がする。

平助くん、それを覚えててわざわざ買って来てくれたの?

嬉しい。

嬉しい、けど……



「巡察の途中でこれ見っけてさ。千鶴っぽいよなって思ったらなんか頭から離れなくなっちゃって」



半分こずつして食べようぜ!

満面の笑みで言いながら、包みを開けた。

ありがとう!って私も満面の笑みを返したけれど、半分こずつって、三つってこと?!

内心、ちょっと焦る。

普通にお腹が空いている時でも、桜餅を三つっていうのはちょっと多いと思う。

それに加えて、今日は既にもう幾つも……



悪いと思いつつ、結局ひとつ目を平らげたところで降参しようと思っていたら、白旗を振る前に雨が降り始めた。



「わっ!洗濯物が!」



ごめん、平助くん!

そう叫びながら、慌てて中庭に走る。

お手入れが大変で乾くのにも時間のかかる隊服から優先して取り込んでいく。

びしょぬれを免れたものもあったけれど、大半が駄目になってしまった。

もう、何やってるんだろう。


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