望月の訪問者 | ナノ




ぴぴっ ぺふひん!



静かな部屋にシャッターを切ったことを知らせる間抜けな電子音が響く。

ていうか、なんでよりにもよってこんな間抜けたシャッター音に設定してんだ私。

友達の大事な結婚式で、無意識のままに恥をまき散らしてきたのか!

ああ……も、消えてなくなりたい。

総司に刀で粛清されるのはご免だけど。

こう、すーっとね。

雪が解けるようにすーっと溶けてなくなりたいよ。

いや、いやいやいや。

それよりも――



撮れた、かな。

意識をカメラの方に引き戻す。

微かに震える指で、ゆっくりと保存された画像を開く。

そこには、さっきの無邪気な笑顔そのままの総司が写っていた。



「……なんだ、フツーに写るんじゃん」



画面が真っ暗だったり真っ白だったりになってるかも、とか。

総司だけ写らなくて、不自然に宙に浮かぶマグカップが写るかも、とか。

そんな予想にドキドキした自分がバカみたいだ。

そりゃそうだよね。

だって、総司は幽霊でも何でもなくて、生身の人間な訳なんだし。

どういう原理でここに来ているかは分からないけれど、確かにここに存在している訳だし。

安堵の吐息を落とした。

のに、



「あ、僕だ」



いつの間にか後ろから覗き込んでいた総司のそんな声に、私の心臓は、また縮み上がった。

そうだ、しまった。

己の欲望に忠実になり過ぎて、総司の了解を取ることすら忘れてた。

この気紛れ王子の機嫌を損ねちゃコトだ、面倒臭いことになりかねない!

戦々恐々とした思いでこっそりとその表情を窺えば、ギリギリセーフ!という感じだった。



「なんか一人でこそこそやってるなと思ったら」



それが写真を撮るからくり?

随分と小さいんだね、なんて言いながら物珍しそうにデジカメを眺めている。

ああ、そうか。

勝手に自分の写真を撮られることへの不快感よりも、見慣れない物への好奇心が勝ったか。

意外と単純な奴で良かった。

もう一度、私は安堵の吐息を落とす。



「で、フツーに写るって、何?」



ココアに集中しているようで、私の独り言まで抜け目なくキャッチしていたらしい。

しどろもどろになりながら、幽霊や吸血鬼なんかは写真に写らなかったりするんだと説明した。

勿論、吸血鬼の解説付きで。



「ふうん。血を吸う化け物、ね」


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