望月の訪問者 | ナノ




「ちょっと」



「あ、うん、ごめ……ぶふっ」



謝りながらまた笑う。

しかも笑い方が可愛くない。

ぶへへへへへへへ、そんな感じ。

全然可愛くない。



「あんまり失礼だと斬っちゃうよ」



「だ、だってそれ」



「それ?」



息も切れ切れに笑う美緒ちゃんが指差すのは、僕の腰に結び付けられた白い袋。

これの何が面白いっていうの?

ていうか、こうしたのは美緒ちゃん自身じゃない。



「ダサい」



「は?」



ださいって何?



「イケメンなのにダサいー」



あはははははは!

我慢しきれない、という感じで美緒ちゃんは笑い転げる。

もうほんと、斬っちゃっていいかなこの子。

いつまでも笑われっぱなしなのは癪だから、白い袋は手早く帯から外して脇へ置く。

それがまたツボに入ったらしい美緒ちゃんは、勘弁して、なんて悲痛な声をあげながら喘ぐ。

ああ、うん、そうだね。

もう笑ってないよね。

笑い過ぎの美緒ちゃんは、既に笑うの領域を軽く通り越して喘いでいた。

ぜいぜいいっている姿はちょっともう可哀想なくらい。

まるで走り回った後みたいに赤い、上気した頬。

その熱を貰ってあげようと、そっと手を伸ばした。



「顔、真っ赤だよ」



「!」



僕の手が頬に触れた途端、美緒ちゃんの笑い声はピタリと止まる。

荒い呼吸だけがそこに残る。

びっくりしたみたいに見開かれた丸い瞳に、小さな僕が閉じ込められている。



「手……」



「ん?」



「手、洗ってるよね?」



「まさか」


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