望月の訪問者 | ナノ




「そうだな……じゃあ、あれ食べたい」



がとーしょこら。

そう言えば、眉を顰めた美緒ちゃんがめちゃくちゃ嫌そうな顔をする。



「……この前失敗したの知ってる癖に」



「だから挽回の機会をあげるって言ってるの」



「うわ、生意気」



そう言って美緒ちゃんは笑う。

その笑顔が妙に幼くて、なんだか憎めない。

ずるいよね、そういうの。

なんだか負けたような気がして、目の前で酸っぱい顔をして唸る彼女を軽く睨んだ。

唸ることに必死で、全然気づいてないけど。



「ん――……わかった!」



勢いよく彼女は顔をあげる。



「今日は材料がないから無理だけど、次来る時までに作っといたげる」



という訳で、もう一戦しようか。

黒い駒を目線の高さまで掲げて、にんまり笑う。

また?

そんな僕の声は無視される。

さっきの「もう一回だけ」なんていう言葉も丸々無視で、美緒ちゃんはまた、盤上に駒を並べ始めた。

もう既に次の作戦を練り始めているのか、その顔はえらく神妙だ。



「ねぇ。また負けて、もっと僕に命令して欲しいってこと?気持ち悪いなぁ」



「ちょっと、変態を見るような目で私を見ないでよ」



「変態にしか見えないんだけど」



「断じて違います!」



いたぶられて喜ぶような趣味はありません!

そう言いながら、美緒ちゃんは白い駒を動かし始めた。

結局、僕が何を言ったって気にせず始めるんだね。

あーあ、ちょっとぐらい苛めないとこっちが割に合わないと思うんだけど。


101/194




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -