049 知らない人▽side:総司
真っ暗な美緒ちゃんの部屋で、知らない女の子が眠っていた。
あれ、ここはどこ?
放り出された状況が余りにも予想外で、辿り着いた格好のまま彼女を見下ろしていた。
白く浮かぶ丸い顔。
その顔は、どこかで見掛けたことがあるような気がした。
どこで会ったんだろう。
親しみに似た感情が湧く。
けれど、どれだけ頭の中を探してみたって、彼女の名前も、彼女と出会った場所も浮かんでこなかった。
この子は一体誰?
もっとちゃんと顔を確認したくて、部屋の電気をつけてからそっと近づいた。
ゆっくりとした動作で枕元に座ってみたけれど、彼女は起きる気配をみせない。
ここは、いつもの場所とは違うのかな。
室内にあるものは、見慣れた美緒ちゃんのもので間違いないんだけど。
彼女の代わりに、彼女よりもう少し幼い女の子がいる。
部屋の小物と、布団の中で眠る女の子を代わる代わる見比べながら首を傾げた。
(妹?それとも――)
「ん……」
ちいさな唸り声と共に、少女はころりと寝返りを打つ。
僕からは彼女の横顔が見える位置になった。
その横顔、は。
(美緒、ちゃん――?!)
見覚えがあった。
ちょうど、去年の今頃、初めてここに来た日。
月夜に浮かんだ美緒ちゃんの横顔。
幼い寝顔は余りにも意外だった。
普段は、もっとずっと大人びた顔をしているから。
「眩っし……って、そうじ?」
「おはよ」
とろりとした目線でこちらを見上げる美緒ちゃんに向かってにっこり微笑む。
「一瞬知らない人かと思った。だって全然顔が違うんだもん」
そう言うと、無言ですごく苦々しい顔をされた。
苦々しいを通り越して睨んでるんだけど、自覚あるのかな。
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