(うわ、寝過ぎた)
夜の間に何度も寝て覚めてを繰り返していたけれど、明るい日差しに目が覚めて、八時過ぎであることを示す時計を確認したのが最後、夕方まで爆睡してしまったらしい。
障子越しに夕陽が部屋を橙色に染めている。
あああ、最悪だ。
午後から仕事しようって思ってたのに。
急がないとギリギリアウトになりそうな案件なのに。
慌てて飛び起きた、
筈だった。
起こした筈の上体は、持ち上がらなくてそのままぐらりと布団に引き戻される。
うわ、なにこれ気持ち悪い。
ぐるぐる視界が回る。
やばいやばいやばい。
こんなことしてる場合じゃないのに。
焦る気持ちに反して、ずるずると意識は急速に闇の中へと引き摺り込まれる。
飽きるほど寝たはずなのに、まだ眠るか、この身体は。
起きろ起きろ。
もうすぐ総司だって来るのに。
あいつの目の前でぐーすか寝てるなんて自殺行為だよ。
どんな悪戯されるか分かったもんじゃない。
やめてやめて、寝てる場合じゃないんだってば。
心の中であげた悲鳴も空しく、ぷつりと私の意識は途絶えた。
次に目を覚ました時、部屋には灯りがついていた。
「おはよ」
枕元に座ったあいつがにっこり微笑む。
「一瞬知らない人かと思った。だって全然顔が違うんだもん」
「……」
どーせすっぴんは酷い地味顔ですよ!
そう言い返す元気もなくて、布団からじとっとした視線を送るしかなかった。
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