048 這々の体▼side:美緒
このところずっと忙しくて、週半ばには既に私の体力は限界だった。
もう若くない、そう言ったら職場のお姉さま方からは非難の嵐だったけど、でも確実に体力の衰えを感じている。
悲鳴をあげる身体を騙し騙ししながら後半を過ごし、ようやく迎えた金曜の夜、足を引き摺るようにして家に帰りついた。
(も、ムリ)
布団を敷くのも億劫で、ストーブに火を入れたら、コートのまま床に転がった。
ご飯食べなきゃ、とか、シャワー浴びなきゃ、とか思うけど、とろとろと下がってくる瞼に抗えない。
あああ、仕方ない。このまま眠ってしまえ。
全てを諦めて、そのままずぶずぶと眠りの淵に沈んでいった。
どれくらい眠っていたんだろう。
喉の渇きで目が覚めた。
ストーブががんがん燃えているのに、部屋はまだ寒い。
寝起きのふらつく足取りで台所に向かって、冷たい水を喉に流し込む。
内側から身体を冷やすそれに、ぶるっと身震いをして、そのまま風呂場に向かった。
服を脱ぐ前にシャワーから湯を出しておいて浴室を温めておく。
今日はお湯張らなくていいや。
家の中は震えるくらい寒くて、出来るなら熱いお湯にゆっくり浸かって温まりたかったけど、お湯を張るのを待つ気力もなかった。
湯気で真っ白になった浴室でのろのろと身体を洗う。
疲労がピークに達してるのか、泡を含ませたスポンジすら重たく感じた。
大雑把にクレンジングで化粧を落として、雑に髪を洗う。
あああ、身体を動かすのが辛い。
永遠に終わらないんじゃないかと疑いたくなるような苦痛のバスタイムをどうにかこうにか修了して、外に出る。
脱衣所は、何かの冗談じゃないかと疑いたくなるくらい冷え込んでいたけれど、もう着替えるのすら億劫で、タオルを身体に巻きつけた格好で、凍えながらしばらくぼんやりしていた。
寒い。
当たり前だけど、めちゃくちゃ寒い。
なのに風呂上がりで顔は上気している。
(明日は昼まで寝よう。起きたら持って帰って来た仕事して、夜は総司が来る)
さっさと回復しておかないと、あいつの相手をするのは気力も体力も要る。
だるい腕を持ち上げて着替えを済ませると、もう髪を乾かす余力は残っていなかった。
タオル巻いときゃその内乾くだろ。
冷たく濡れた髪が首筋に触れないようタオルに巻きこんで、部屋に戻った。
あああ、本当にだるい。
歳は取りたくない。
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