「彼氏によろしく!」
「いつか、紹介しなさいよ!」
口々にそう言って私を見送る友人達に苦笑しながら手を振って店を出る。
クリスマス前の駅前は、イルミネーションで綺麗にデコレーションされていて、ひと足早くそこいらでいちゃついているカップルが目立つ。
寒いだろうに、イチャイチャは家に帰ってやんなさいよ。
他人事ながらそんなことを考えてため息を落とす。
(いつか紹介しろ、か)
それはきっと、不可能に近い。
どうやって月に一度、夜の間だけ現れる史実の人物を紹介しろっていうんだろう。
(まぁ、彼氏でもないんだから、紹介する必要すらないけどね)
微苦笑したらなぜだか胸が痛んだ。
なんだ、このズキズキは。
胃が弱ってんのかな。
緑色のコンビニエンスストアの看板に吸い寄せられるようにして、ふらふらと立ち寄る。
お酒飲んだ後すぐ、栄養ドリンク飲んでもいいんだっけ。
胃腸系なら大丈夫かな。
のっぺりした笑顔を浮かべる胃のイラストがついた液薬を二本持ってレジに向かう。
レジに辿り着くまでに見つけた、総司の好きそうな砂糖の塊みたいなお菓子の幾つかに手を伸ばしかけたけど、止めた。
別にあいつを餌付けする必要なんてないし。
なんで甘やかそうとしてるんだ私。
顔を顰めながら、レジを待つ列の最後尾につく。
ああ、ちょっと目がゴロゴロするな。
マスカラが目に入ったか、店の中にくすぶっていた紫煙が目に染みたか。
コンタクトの座りも悪いような気がした。
擦りたいけれど、今ここで化粧を崩すのは得策じゃない。
わざわざ列を抜けて目薬を買うのも面倒だったから、意識的に瞬きをして無理に目を潤わせた。
うわ、一度気になり始めるとものすごく不快。
はやく順番回って来ないかな。
急いで帰ってコンタクトを取ってしまいたい。
そんなことを考えながら、じりじりと列が進むのを待った。
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