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▽ 赤い蒸気機関車


ホグワーツ特急の出るプラットホームはキングズ・クロス駅の中。
イコール、マグル街の中である。
アンタレスの母親は何がどうしてもマグルに会いたくないらしく、荷物を持った2人の手を取って"姿くらまし"をした。

もしかしたらシリウスと母親とマグル街を歩けたかもしれないのに、とアンタレスはひそかに肩を落とした。

「いいですねシリウス、アンタレス。必ずスリザリンに入るのですよ。ブラック家としての誇りを忘れずに気高く振る舞うのです」
「はい、お母様」
「…ふん」

嫌そうに鼻を鳴らしたシリウスはさっさと人混みに紛れてしまった。
アンタレスも、母親との別れの挨拶もそこそこにホグワーツ特急へと乗り込んだ。

運良くすぐにマルシベールに会えたアンタレスは、エイブリーが待っているというコンパートメントへと向かう。
ドアに手を掛けたマルシベールはうんざりしたようにため息を吐いた。

「ちょっと、空気重いけど気にすんな」
「どういうことよ?」

扉を開け放った途端に、コンパートメントの中に篭っていたらしいどんよりした雰囲気が流れ出してきた。
おそるおそるアンタレスが中を覗くと、暗いオーラの発生源もといエイブリーがorzの状態でそこにいた。

チェルシーチェルシーとまるで譫言のように繰り返すエイブリーの目はあらぬ場所を見ている。
ハイライトはない。

「…な?」
「…そういうことだったのね」

遠い目をした2人だったが、人が近づいているのに気づいて慌てて暗いコンパートメントに入る。
あまりの息苦しさになんとかエイブリーを立ち直らせようと奮闘する2人だが、ついに乾いた笑い声をたてはじめたエイブリーに辟易し、放置プレイをすることに決めた。



ホグワーツは、もうすぐそこまで近づいていた。

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