Tales of... | ナノ

はじまりの合図

 イヤなヤツに会ってしまった。
 いつの間にかボクらの旅に同行することになっていた、悪徳商売人。何を考えているのかわからない。…いや、きっと金稼ぎのことしか考えてないに決まってる!

 さすがに何度か逃げ出そうとしたことはある。だけど、この女は目ざといから失敗続き。

「あら、そんな怖い顔で見つめないでよ」
「ふんだ! ボクはシングたちみたいに甘くないんだからね!」
「それは残念ね。やっぱり、カラダで払ってもらうしかないのかしら」
「……」

 この女、イネスなら本当にやりかねない。考えただけでもぞっとしない。

「ベリルみたいなちんちくりんでも、特殊嗜好者っているのよねぇ」
「むっき〜! ボクみたいなレディに向かってちんちくりんってなにさ!」

 いくら自分が背も高くて胸も大きいからって! ボクに対する当て付けのように露出されたイネスのお腹(ヒスイには被害妄想だ、なんて言われたけどさ)に向かって特大の超キックを繰り広げてやりたくなった。いや、本当にそんなことしたら後で何をされるかわかったもんじゃないからやらないけど。

 ぶぅ、と頬を膨らますと、イネスは少し困ったように笑った。するとちょっと腰をかがめて両手でボクの頬をつねって、そのまま左右に思いっきり、ひっぱった。

「いひゃひゃひゃ、いひゃい、いひゃいよ!!」

 そのままほっぺは開放されたけど、このひりひりとした痛みはしばらく続きそうだ。イネスは怪力なんだから少しは手加減してほしい。涙目でイネスを見上げると、最後にトドメだと言わんばかりにおでこをはたかれた。

「ほーら、そんな顔しないの!」
「誰のせいだと思ってるんだよ!!」
「あら、誰のせいなのかしら?」

 なにさ、いまさらとぼけちゃって! わざとらしくきょとんと手を顔に当てて考えるフリをするイネスに、気が抜けて思わず苦笑する。するとイネスはそう、それ! なんて笑って見せた。

「女の子はいつでも笑っとくもんよ。ベリルだって、笑っとけばそれなりに可愛いんだから」
「な…! そ、"それなりに" はヨケーだよ!!」

 ボクは思いっきり帽子のつばを引っ張って顔を隠す。イネスが変なこと言いだすから、顔が熱い。いまさらそんなこと言ったって、ボクは懐柔されたりなんかしないんだからね!

「……イネスのばか」
「はいはい」

 イネスはそのまま涼しい顔で手をひらひらと振ってコハクたちのところへ行ってしまった。ボクもみんなのところに行きたかったけど、顔の熱はなかなか冷えてくれなかった。

(嬉しかった、なんて、死んでも言ってやんないんだから!)


はじまりの合図



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恋に落ちる音がしーたああああああああ!!!!!!!!!!!\(^q^)/
イネベリ可愛いですね!キャラ、状況すべてが迷子ですけどね!
百合ぷまい百合(^///^)


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