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誰かに恨まれることで私は救われるのです

「みんな優しすぎ、っていうか、甘すぎなんだよ〜!」

 アニスはそうまくし立て、酔っ払いさながらにバンッと勢い良くテーブルを叩いた。シンクはそんなこと気にもせず、目の前のカップを口に運ぶ。中身の飲み物は隣に置いてある薄いピンク色のマグカップと同じ筈だが、もちろんアルコールは入っていない。

「だいたいスピノザの時だってさぁ!アイツは一回総長に告げ口してたんだよ!?そのせいでこっちは大変な思いをしたっていうのに、みんな簡単に信じすぎ!」

 アニスもアニスで、シンクが自分の話になんの興味も抱いていないことなど気にもせず、どんどんと不満を吐いていく。コトリとカップを置いて、シンクは嘲笑うように口元を歪めた。

「アンタだってアイツらを騙してたくせに、よく言うよ」
「そうだよ!だから、みんな甘すぎなんだよ…」

 キッとシンクを睨んだ茶色い瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。シンクは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに細めてアニスを睨む。
 アニスはぽすり、とシンクの胸に頭を預けた。服の裾を握り締めて、微かに肩を震わせる。シンクは何も言わずに、どこにも触れずに、ただアニスを見下ろしていた。

「みんな、優しすぎるんだよ…。私のせいで、イオン様は死んじゃったのに…イオン様はもういないのに、みんな私を許してくれるの…。やさしく笑って、あれはしょうがなかったんだって…」
「……」
「私、パパとママが大好きなの!だからモースに従った…。でもね、私、イオン様も大好きだったんだよ。私にとってイオン様はあの人しかいなかったのに」

 アニスは顔を上げて、大好きな人と同じ深い碧の瞳を捉える。

「ねぇ、知ってた?アンタが地核に落ちた時、イオン様泣いてたんだよ」

 シンクはそっとアニスの髪の毛に触れて、そのままやさしく撫でる。

「安心しなよ。ボクはあんなヤツらほど甘くはないさ。アニス、アンタがイオンを殺したんだ。ボクは絶対に許さないよ」

 だから、今度はボクがアンタを殺してあげるよ。イオンと同じ、このボクが。
 アニスの耳元でそう呟くと、シンクは静かに部屋から出ていった。

 ひとり取り残されたアニスは、ぽろぽろと涙を流す。そして小さく小さく呟いた。

(ありがとう、シンク)


誰かに恨まれることで私は救われるのです
その誰かがあなたと同じ存在だなんて、これ以上の幸福はないのでしょう(これは私の傲慢です)


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シンアニが好きです大好きです(真顔)
ケンカップルだと可愛いけどこんな感じのも好きだなぁとか。

しかしこの話そのうちリベンジしたいです…(^q^)


02/05



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