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寄り道した帰り道

 ダングレストを照らす夕日の中、ユーリとジュディスは街の中を歩いていた。現在は仕事の帰りであり、ギルドの拠点では首領であるカロルが首を長くして待っている筈だ。
 今回の依頼はとある商人の護衛。大した人数、距離でもなかったため、仲間内で戦闘狂と称されたユーリとジュディスの二人だけでも十分事足りた。依頼をこなした頃はまだ昼も過ぎたばかりだったというのに、このダングレストに近付いたとたん一気に日が傾くのだから何度見ても不思議だ。

 もうこの街には旅をしていた分も合わせて何度も来ているため、ユーリもジュディスもここの生まれではないにも関わらず街の勝手は知っている。それにあとはもうカロルのもとへ戻るだけなので、特に何を見るわけでもなくただ歩いていく。

 すると、ユーリは自分の僅かばかり後ろを歩いていたジュディスがふいに立ち止まるのを目の端でとらえた。ユーリも立ち止まり振り返ると、どうやら彼女は商業ギルドの出店を見ているようだった。商業ギルドといっても幸福の市場のようにあらゆる商品を扱っているようなものではなく、服飾の専門ギルドらしい。どちらかというとオシャレギルドに近い雰囲気だ。

「ジュディ、どうしたんだ?」
「少しこの服が気になったの」

 そう言ってジュディスが指し示したのは、店先に見本として出されていたトルソーに着せられた服。少し裾の短いワンピースで、シンプルながらも端々に細かい装飾が施されている可愛らしいデザインだ。

「ふーん…ジュディに似合いそうだな」
「ふふ、そうかしら?」

 そう聞き返しながらも、ジュディスは嬉しそうに口元を綻ばせる。ユーリは彼女もこういった店が好きなのかと少し意外だった。こういうものはどちらかというとエステルやパティが喜んで飛び付くようなイメージだ。

「中、見ていきたいのか?」
「え?」
「そんな顔してるぜ」

 そうかしら、とジュディスは少し驚いたように左手で自身の頬に触れた。自分でもどんな顔をしているのか意識していなかったようだ。
 ジュディスはふいにふっと微笑んで、先ほどのワンピースに目を向ける。

「そうかもしれないわね。少し前まで、自分がこうやって服を買えるなんて思っていなかったもの。考えていたのはずっと、ヘルメス式魔導器を壊すことだけ」

 ユーリは思わずジュディスの顔を見る。普段と何ら変わりない筈の涼しげな表情が、なぜだか少しだけ寂しげに見えた。
 彼女が何年もの間、竜使いとしての生活を続けていたということはユーリも知っている。下町の子ども達を見ていても、十代というと本来ならばお洒落に目覚めて服や装飾品を気にしだす年頃だ。
 そんな時から彼女は魔導器を壊す為だけに生きていたのかと思うとぞっとしない話である。

「そろそろ行きましょう」
「もういいのか?」

 ジュディスが突然歩きだして、ユーリは思わず聞き返す。どうせならもう少し見ていけばいいのに。そう伝えると、ジュディスは少し困ったような表情になる。

「早く帰らないとカロルに悪いわ」
「ちょっとくらい大丈夫だろ。それに、カロル先生だってきっとわかってくれるさ」
「そうかしら?」

 ユーリの主観だと、カロルはどうもジュディスには甘い。というより、ユーリやレイヴン相手には厳しいのだ。
 それに、彼だってジュディスの過去を知っている。彼女の買い物で遅くなったといって、それを咎めるようなことはしないだろう。そう思い、ユーリは首肯した。

「それなら少しだけ、中も見ていこうかしら」

 荷物持ちはお願いね、と悪戯っぽく微笑んだジュディスに、ユーリは帰りの荷物の量を覚悟して軽く苦笑いした。

「仰せのままに、お嬢さん」


寄り道した帰り道
たまには幼少気分に浸ってみるの



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予定ではもっとジュディスちゃんが女の子女の子するはずだったんだけど書いてみたらそうでもなかった(・ω・)


02/19



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