なかよしこよし

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
「ん……シャー、リィ…?」
「お兄ちゃん、起きて!」

 家で寝ていると、突然乱暴に揺り起こされた。今日は特に用事はなかったのに。ていうかシャーリィってこんなに乱暴だったっけ? そう思いつつも、瞼を開く。
 まだ視界はぼんやりしている。目の前の黄色い少女は──

「なぁんてね! ホラ、早く起きなさいよ〜!」
「………ノーマか…」

 あぁ、デジャヴ。今度は一体なんなんだ。

「ウィルッちが呼んでんだよ。なんか急用があるんだって。早く起きないとウィルッちの鉄拳が…」
「で! ウィルの家に行けばいいんだな!?」
「早っ!!」


***



 ウィルの家に着くと、既にみんな集まっていた。俺がソファーに座るのを確認すると、ウィルが口を開く。

「実は、ある男がたびたび街の者にケンカをしかけているらしい」
「ある男?」
「ああ、旅の者で現在は宿に泊まっているそうだ」

 神妙な面持ちでクロエが尋ねる。騎士としての正義感から、黙ってはいられないのだろう。

「ノーマ、何か知ってる?」
「いんや、見たことも聞いたこともないよ」

 シャーリィの言葉に、そういえばノーマも宿に泊まっていたということを思い出す。当の本人にはまったく覚えがないようだが。

「売られたケンカはワイが買っちゃるわ!」
「モーゼス、落ち着かんか! わざわざケンカを買ってどうする!」
「これだから野蛮人は…」
「ジェー坊、ワレ…もういっぺん言うてみい!」
「モーゼスさんはいつも暴力に頼りすぎなんですよ」
「なんじゃと!?」
「静かにせんか、バカ者!」

 ボコッ、バキッ。言い争いを始めたモーゼスとジェイの頭にウィルの鉄拳が落ちる。

 声にならない悲鳴で悶絶するモーゼスと、なんで僕まで と不満げに痛みを堪えているジェイももはやいつもの光景と言えなくもない。

ボカッ。
「ふぬあぁぁぁぁ〜!!」

 そんな二人をからかって、同じく拳骨を頂戴してよくわからない悲鳴をあげるノーマもいつものことなので放置。


 そこで、頭の痛みから立ち直ったジェイが口を開いた。

「それで、ケンカを売られた人たちはどうしたんですか?」
「うむ。相手にしなかったら旅の者もそれ以上乱暴な真似をすることもなかったそうだ」
「ハァ?」

 ウィルのあまりにもあっけない解答に、みんな一斉にウィルの方に視線を向けた。

「それってつまり……」
「全員無事ってコト?」

 なにかを言いかけて、拍子抜けして言葉が出てこなかったのであろうクロエを引き継いでノーマが尋ねる。ウィルはそういうことだ、なんて重々しげに答えたけど…

「なぁ、それって別に俺らが集まることなかったんじゃないか?」

 呆れて言った俺の言葉に、ウィル以外の全員が頷く。

 だってそれってつまり、その旅の男はただケンカを売ってくるだけの迷惑なヤツで、保安官であるウィルが一発鉄拳をお見舞いしてやればすむ話だろ?


 ウィルがそのことに気付いたのは、ほんの少し後だった。




みんなで集まるのはもはや習性です。




――――――――――

ちょっとしたことでもすぐに集まっちゃう仲良しパーティ!\(^q^)/


再12/19



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