黄色い向日葵の季節はもうすぐだ!

 街の端にあるためか、このあたりは人通りが少ない。しかし物寂しい感じがしないのは、やわらかな日の光で溢れているからだろう。ほどよく暖かい日差しの中、カエルの鳴く声が聞こえる。


 石段を上っていけば、墓地がある。その一番右の奥に、見慣れた黄色い背中を発見する。
 この場に長居するつもりはないので、墓地の入り口から大声で呼び掛けた。

「ノーマさん!」
「お、ジェージェーじゃん。どったの〜?」
「僕を呼んだのはノーマさんでしょう? 宿に行ったら、墓地にいるとザマランさんが教えてくれましたよ」
「あ、そ〜だった!」

 約束をしたのはつい昨日のことだった筈なのだが、能天気な彼女はすっかり忘れていたらしい。

「いや〜、ごめんごめん。おまたせ!」

 ノーマさんは小走りで僕のところへ来る。さっきまでノーマさんがいた、スヴェンさんの墓石を見ると、そこには黄色い花が供えられていた。

「花を供えに来ていたんですね」
「そ〜そ〜、向日葵! まだちょっと早いんだけどね」
「もう少ししたら、花屋でなくても見られますよ」
「うん、そだね」

 通常より小さい種のそれは、花屋で頼んだのだろう、可愛らしい紙で束ねられている。

 墓地には似つかわしくないが、なんともノーマさんらしくて思わず笑ってしまった。

「それじゃ、行くわよ。ジェージェー! いざトレジャーハントへ!」
「はいはい」

 一人で盛り上がるノーマさんだけど、そんな彼女が可愛い、だなんて思ってしまうのだから、僕もそろそろ末期なのかもしれない。

 ノーマさんは最後に墓地に振り返って、叫びながら大きく手を振った。

「んじゃ、いってきます、ししょー!」

 そうして彼女は「あた〜しは〜 すご〜腕〜 トレジャーハンター!」といつもの歌をうたいながら石段を駆け下りていく。

 彼女のノリについていけずに立っていると、ノーマさんが石段の下から口を尖らせた。

「ちょっとジェージェー! 早くしてよね〜」
「今行きますよ」


 いつもより気分が爽快なのは、きっとこの天気のおかげだろう。そういうことにしておいて、僕も軽快に石段を下る。

 首のリングにつけた黄色い鈴が、ちりん、と軽やかに鳴った。



黄色い向日葵の季節はもうすぐだ!
黄色い花と黄色い鈴と、黄色いあの子




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title : 電子レンジ

再11/21



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