虹の上のコンサート

 あたしのとっておきの提案に、だけどみんなはぽかーん、よくわかっていないみたい。なにさ、せっかくのあたしの見せ場!

「だから〜、みんなでグー姉さんのとこ行こうよ〜!」
「ねぇノーマ、望海の祭壇に行っても、グリューネさんはもういないんじゃない?」
「そりゃそうだけどさ。もしかしたら、グー姉さんが見てくれてるかもしれないじゃん。だったら、みんな元気にしてるよ〜って、グー姉さんみたいにピクニックしてるよ〜って、見せたいじゃん」
「僕は構いませんよ、望海の祭壇でも。グリューネさんはともかく、あそこなら景色もいいですし、ダクトを使えばすぐに着きます」
「さっすがジェージェー! 素直じゃないんだから〜」
「なんの話ですか」

 ジェージェーをからかってやると、少し赤くなってそっぽを向いた。でも、これで賛成一票。あともう一押し!

「でも、確かに景色はいいですよね」
「ああ。それに、それこそピクニックでもないと滅多に行かないだろうしな」
「先程の問題点はすべて解決だな」

 ──って、あれ? これはみんな望海の祭壇でいい流れ? いやそれはそれでいいんだけど、なんか納得いかない。あたしが言った時とジェージェーが言った時、一体どう違うってのよ〜!

「ヒョオォォォォウ! そうと決まれば、さっそく出発じゃ!」

 モーすけが叫びだした時には、もうリッちゃんやウィルッちが料理をバスケットにつめていた。そこでセネセネが何かを思いついたようで、ウィルッちに呼びかけた。

「なぁ、それならハリエットも連れていかないか? その…グリューネさんのところへ行くっていうなら」
「セネセネ……! ちゃんとあたしの言ったこと聞いてくれてたのね!」
「「ノーマ!!」」

 思わずセネセネに抱きついてやったら、クーとリッちゃんに同時に名前を呼ばれた。おぉ、怖い怖い。セネセネは二人がなんで怒っているのかわかっていないようで、顔にはてなを浮かべている。こりゃ、二人の気持ちに気付くのはまだまだ先かな。

「俺はハリエットも一緒で構わんが…」
「なによ、偉そうに!」

 それじゃハッちを呼びにいこうよ、なんて言う間もなく、バーンって勢いよく戸を開けてハッちが入ってきた。

「ハリエット、そんなところで聞いていたのか」
「う"…。あ、あんなにでっかい声で話してたから、聞こえたのよ!」

 たぶんずっと聞いていたんだろうな〜、なんてそんなことを言ったらハッちの機嫌が悪くなりそうだ。

「で、どうするんだ? ハリエット」
「セネルくんが言ってくれたんだもの。行くに決まってるでしょ」
「そうか」

 セネセネ達に負けず劣らず、この親子も相変わらず、と。

「それじゃ、メンバーも一人増えたことだし行きますか!」
「そうだな」

 そうして玄関戸に一番近いセネセネが扉を開く。

「……………」

 がちゃり。

「って、ちょっとなに閉めてんのよ!」
「いや…、なんかものすごく嫌なものを見た気がして」
「嫌なもの?」

 そしてクーも扉を開く。あ、閉めた。

「あぁもう面倒くさい! さっさと出る!」
「のわっ!」
「僕まで押さないでくださいよ!」

 あたしは目の前にいたジェージェーやモーすけごと、セネセネやクーをむりやり外に押し出した。ごちゃごちゃ言ってるジェージェーとモーすけは無視。

 するとそこには…

「あ、」
「お、」
「ハァ…」
「フェロボンじゃ〜ん」
「久しぶりだな、兄弟!」

 最近ぜんぜん見てなかったから本当に久しぶりだ。

「今はお前らと遊んでる暇はないんだ」
「む、どうしてだ、兄弟! せっかく今から噴水広場で愛のための活動をしようと思っていたのに!」

 愛のための活動…たぶん、いつものミュージカルだろう。久々に見ていきたい気もするけど、それはまた今度かな。

「今からピクニックに行くんじゃ!」
「ピクニックだと!? むむ、なるほど…」

 それで帰ると思ったんだけど、なんだかフェロボンは考え込んでるみたいだ。すると

「よし、では私たちもピクニックについていこうではないか! 愛のために!」
「ハァ!?」
「噴水広場はどうしたんですか?」
「というか、そこに愛は関係ないのでは?」
「クー、気にしちゃ負けだよ」
「そ、そうか…」
「愛の戦士には時には休息も必要だ! そうだろう、イザベラくん!」
「はい」

 こちらが嫌と言ってもなんとしてでもついてくるつもりらしい。フェロボンって源聖レクサリア皇国の軍隊のそれなりにすごい地位の人達だったと思うんだけど、そんな簡単に街を空けてもいいのかな?

「別にいいんじゃないかな。人数の多いほうが、きっとグリューネさんも喜ぶよ」
「まぁ、シャーリィがそう言うなら…」

 確かに、グー姉さんは喜びそう。「みんな仲良しで、お姉さんと〜っても嬉しいわよぉ」って。

「あ、それじゃあさ、もういっそのことみんな集めようよ!」
「みんな?」
「うん! みんなで手分けして声かけて、望海の祭壇に集合!」
「ええのう! ほんならワイはチャバや子分共も連れてってやろうかの」
「私はエルザを誘ってみようかな。たまにはみんなで騒いだりするのも、きっと身体にいいはずだろうし」
「エルちん、クーが誘ったらきっと絶対来るね〜」
「僕はモフモフ族のみんなに声をかけてきます。みんな、みなさんに会いたがってますし」
「シャーリィ、テューラを誘ってみたらどうだ?」
「うん、たぶんまだ水の民の里にいるはずだし誘ってみるね!」
「あたしは…ま、面倒だけど一応ザマランのジジィでも誘ってやるか〜」

 うん、なんだか楽しくなってきた。みんななんだかんだでグー姉さんに会いに行く気満々だし。

「でもそんなに集まったら、料理が足りなくならないか?」
「それじゃ、集まるまでにハティがいっぱい作っといてあげる!」
「ハリエット、さすがにそれは…」
「パパは黙ってて!」
「……ウィルッち、ハッちのことは任せたわ。しっかり見といてよね…!」
「う、うむ…」
「じゃ、みんな一時間後に望海の祭壇に集合〜! それまで各自解散!」

 そうしてモーすけは野営地、あたしは宿、クーは病院、ウィルッちとハッちは家の中、ジェージェーとセネセネとリッちゃんはダクトへ、それぞれ散らばった。フェロボンはモーすけと同じ方向に歩いていったんだけど、どこ行ったんだろ。




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