「今日もかっこいいな〜和くん。」
夏の暑さにも負けないくらいの熱視線をネット越しの彼に向ける。
私の好きな人。宮前 和くん。男子バスケットボール部。ポジションは確かガードだった気がする。私は和くんにバスケ部に入って会って一目ぼれだった。
本人にはバレないように頑張っている。でも部活中、和くんを見ているとチームメイトに怒られてしまう。あれだ、恋は盲目ってやつだ。怒られたから真剣に部活に励むことにした。
「それにしてもあっついな〜・・・」
額から流れる汗を腕で拭うそれでも次から次へと汗が落ちる。
「ねえ、美紅。」
隣でタオルで汗を拭っている美紅に声をかける。
「どうしたの美穂?」
タオルを離し私のほうに向きなおる。
「私思ったの、和くん見てる時は汗なんかかいてなかった。もしかして和くんはマイナスイオンを放っているんじゃないっ…」
「部活に集中しなさい。」
言い終わる前に遮られた上にスクイズで頭をコツンと叩かれた。
「えっと、ごめんなさい。」
美紅は白い歯を見せてニカッと笑った
「あとちょっとで練習終わるし、帰りに和と京也誘って寄り道しよっか!」
そのあとの練習は俄然やる気がわいた。


「あんた本当すごいよ….。」
部室で着替える私に美紅は言った。残りの練習は誰もが地獄だというバレーコート7周ダッシュだった。皆がもたつく足取りの中私だけは目を輝かせながら走っていた。
「ああ、楽しみで…。」
「楽しみでもあのダッシュができるなんてお前」
そんなことを話しながら部室を出た。すると前にちょうど和くんと京也くんがいた。
美紅が弾んだ声で京也くんを呼んだ。京也くんは美紅の思い人であり幼馴染である。
「今から美穂と一緒に寄り道するんだけどさ、一緒にどうよ?」
誘い方がおっさんぽいが二人はあっさり誘いに乗ってくれた
「アイスくいてーし、いいよ。」
そんな理由だと思ったが無理もない。こんな暑さだ、私もアイス食べたいし。


向かったのは学校から歩いて約10分の駄菓子屋だ。向かうといつも通り同じ制服を着た学生が数人いる。皆アイスのケースを漁りながら喋っている。
私たちもアイスを選ぶことにした。いっつもここで買うアイスは決まっている。ビスケットサンドアイスだ小さい時からなぜかずっとこればかり買っている。ラスト一つだしラッキーだと思いながらビスケットサンドアイスに手を伸ばす。それと同時に同じものを取ろうとしているもう一つの手に気づく。隣を見ると、和くんだった。
ついてない、今日に限って本当に。でも和くんだ。譲るしかない。
「美穂にあげる。」
和くんはあっさりアイスを手放した。平気そうには見えない。
「いや、和くんにあげるよ!私他のでもいいし。」
和くんにそっとアイスを差し出す。
「じゃ、割り勘の半分こなら俺もいいよ。」
「う、うん、私もそれでいいよ!というかそれがいいよ!」
「あ、やっぱ。女子にお金払わせるのは俺が嫌だからなあ。」
「不平等だよ!!!払う!!!」
無駄に大きい声でそう言う私を見て和くんは少し笑った後にふっと笑った。羞恥心もあるが何より彼の笑顔は心地いい。体温が一気に下げられたような感覚だ。本当に和くんはマイナスイオンでも放っているのかもしれない。
(ああ、やっぱり和くんが好きだなあ。他の子にとられちゃうの嫌だなあ。)
無性に思いを伝えたくなるのは何故だろう。やっぱり暑さで頭やられちゃったのかな。
そんなことを考えながら私の口は勝手に開いて、彼への思いを不器用に語っていた。
「私、和くんが、好き。だよ。和くんの側は心地よくて、涼しくて、なんか、安心するんだ。和くんはマイナスイオンでも放っているんじゃないって思うくらいには。部活してるところとか和くんは輝いていて夏のまぶしさと夏の夜の涼しさ。それが和くんだと思うの。好き。大好き。」
言っているうちに涙腺が熱くなり涙袋からポロポロと涙が零れ落ちる。恥ずかしさとフラれた時の気まずさと。いろんなものが混ざり合った涙。
流れてくる涙を何度も何度も拭ってたまに嗚咽を漏らす。
「泣かないでよ、俺。美穂のこと好きだよ。だから。」
私はおもわず顔をあげる。和くんは顔を真っ赤にして目をそらしていた。
「え、なに、困る。見ないで。」
必死に顔を隠す和くん
嗚呼、何て愛おしいんだろう。
「後、マイナスイオンって。何?」
少しはにかみながら問いかける和くん。体温が下がる感覚。


和くんが握っていたアイスはとっくに溶けていて。
「和くん。アイス溶けちゃってるね。」
和くんは水滴が落ちる袋を見てびっくりしていた。
「溶けちゃったね。私たちお熱いのかな。」
ふざけ半分でくすっと笑う私を見て和くんは
「俺は、お熱いカップルなんかより涼しいカップルがいいかな。」
自分で言って恥ずかしがる和くん。ほら、涼しい。



マイナスイオンの彼/春沢リマ


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