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そいつはいかれた野郎だった。
それがここにいる全員の感想だ。

「天使っていうのはさ、色んな仕事をしているのさ」

男は笑うのをやめてもう片方のカートをあけはじめた。武器があるかと身構えたが、中にあるのは洋服や小物類ばかりだ。
何が原因かわからねぇがオレのグレイトフル・デッドが効かないって事は、さっき身をもって理解した。直に老化させたはずだが皺ひとつできなかった。いったいどんなからくりなんだか知らねえが、銃なら当たるだろうと俺も銃のセーフティを外した。

「恋を成就させたり、子供を授けたり、天国へ導いたり、夢を叶えたりね。俺は『いい子』を見つけて神様の御加護を与える仕事をしてたんだけど…」

言葉に酔いしれながら、荷物の中からオスカー・ワイルドの童話を取り出してオレに押し付けた。なんでこんなもん、いらねえよ。

「俺も頑張って仕事してるんだよ?でもこの子誰か助ける為にすぐ死んじゃうんだよね。もう何度も人生やり直してあげてるんだけど幸せになれないの。俺も他の担当の子が控えてるわけよ、お仕事たまってんの忙しいのよ」

体をくねらせながら訴える男がキメェ、この異様な状態に血管がブチ切れそうだ。

「で、だ。俺がこのナポリで次の仕事を始めるにあたって、俺の仕事を君らに引き継いで欲しいわけよ」

先程とはうって変わり、ニコニコと笑いながらオレにカードを差し出す。クレジット……おいおい、アメックスのブラックだぜ。

「報酬はたんまりやるさ、このクレジットは自由に使ってもらっていいよ。だからこの子が死なないように成人するまで育ててほしいのよ」

「成人するまでって、このガキが大人になるまでなんてなげーよ!第一成人したらどーすんだよッ!!」

「成人した後は知らない、俺に与えられた仕事はこの子が成人するまで見守る事だもん。その後どうなろうが知ったこっちゃないね」

「は?」

なんとも無責任な。こいつ天使とか言ってるが悪魔や詐欺師の間違いなんじゃねえのか?

「じゃ〜頑張ってね〜!あっ、この荷物はこの子の為に用意したもんだから使ってあげてね!」

男がオレ達に向けて手を振りだしたとたん体が消えていく。おいおいマジかよ、なんなんだよこの事態は。


残されたのは呆けたチームの面子と眠りこけた少女。
起きる気配はない、っていうかこいつ息してんのか?

抱き上げて顔を近付けると、穏やかな寝息が聞こえた。

「プロシュート、空き部屋に寝かせてやれ。今後の事を話したいんだが今は30分後まで休憩しよう、頭を冷やさないともたない…何がなんだか…」

…リゾット オレも頭がイカれる寸前だぜ。

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