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先月あれよ、あれよと入団試験が終わり、『チーム』に配属される事になったペッシは、今日の任務に期待に胸を膨らませ路地裏を進む。
(今日からオレも、暗殺チームの正式な一員なんだ!……)
ずっとプロシュート兄貴の側で見習いをしてきたけど、今日の任務から同行させてもらう事になった。
本当はもう少し先になるはずだったんだけど、先月『あんな』事があったから人手が足りないのだ。
(この角を曲がって…)
「あれ?」
さっきから同じ人がオレの少し先を歩いている。この先の裏路地に店舗はない、あるのは住人の少ないアパートとそれにまぎれてオレ達のアジトがあるのみだ。通り抜けにしたって、こんな治安の悪い地区を選ぶ馬鹿はそうそういない。
「ねえ、そこの君。そっちはあんまり治安が良くないから、用事がないなら行かないほうがいいよ」
「君は……ペッシ君、かな?」
ゆっくりと振り向いた男は、これといった特徴のない中肉中背のどこにでもいそうな普通の男だった。
両手で引き摺る二つの大きな旅行カートをのぞけば、の話だが。
「なんでオレの名前を?」
旅行者にしてはカート以外の荷物が見当たらないこの男の怪しさが、名前を知られているということでより一層深まった。何者なんだ?
「ああ、君と目的地がいっしょなんだよね。今日から俺もお世話になるのさ」
「じゃあ君も『暗殺チーム』の……」
「うん、これからよろしく」
なあんだ、仕事仲間かあ。
そりゃ行き先は一緒だよね、二人ともアジトに向かってるんだもん。
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