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私はリゾットさん(この人達のリーダーらしい)のご厚意で彼らのアパートに住ましてもらうことになり、家事を任された。
天使とやらがくれたカードは私の面倒を見ることが条件のカードらしいので、安全性を考えて、私はあまり外に出ないという方針になったのだ。
私が死んだらカードは使えなくなる。
そう、今までなんで途中で死んで人生をやり直していたのかを皆に話すと、物凄い哀れみを込めた14の瞳が私を取り囲んだのだ。
死んだ理由は、確かにしょうもない物が多かった。人や動物を助けようとしてというのはまだいい方で、どうも私は某ホラー映画のように死を吸い寄せるようで、まともな死に方をしたことが無い。
「…天使がキレていた理由がわかったぜ」
危険だから出るな、死なれるとこっちが困るとプロシュートさんに言われ、ここでの私の仕事はこの家の家政婦になった。そのかわりここに住まわせてもらい生活に必要な物を買ってきてもらう、ギブアンドテイクの関係なのだ。
なのだが…
「おいババア飯はまだか」
「腹へったぞババア」
一部の奴等の私への呼び名が『ババア』になった。確かに何回も生きているから、ここにいる全員より長い人生を生きている。だからって15才の、この中で一番若い私にババアはないだろうババアは!
ギアッチョとイルーゾォとかいう二人はどう考えても20才くらいだろう、日本人の血を引いている私と比べると大分顔が濃くて老けている。
「ババア呼ばわりする奴等に食わせる飯はない!第一あんた達はここに住んでないじゃない、外で食べてきたら?」
ここに全員がこのアパートに住んでいる訳じゃない、リーダーのリゾットさん、プロシュートさん、変態の三人だ。
メローネ、彼の事をまた変態と呼ぶようになったのは他でもない彼からの要望だ。年下にそう呼ばれるのがいいとかなんとか…
とにかく、ギアッチョとイルーゾォの二人はここに住んでいない。
最初は三人分の家事だと思ったから快く引き受けたのだ、それが実は住んでいないだけで七人分することになるだなんて…詐欺である。
「金がねーんだよ、それに飯作んのはお前の仕事だろ」
「それぐらい察しろよ、これだからババアは気が利かない」
居間のソファーに寝そべって口だけを動かす二人が憎い、しかしこれは私に与えられた仕事だ。きっちりやってやろうじゃないか、文句もきっちり吐いてやるけどな!!
「この外見をどう見たらババアに見えるのかしら?ご飯の前に眼科行った方がいいんじゃない?」
怒りに任せて左足を台所のマットに打ち付けると叫び声が、…嬉しそうな叫び声が下から聞こえた。
「ロリババアか…新たな性癖が目覚めそうで、新生活にドキドキするよユキ」
「しなくていい!!台所中に危ないから足に擦り寄るな変態!!鍋ぶっかけるよ!!」
朝から作っていたラグー(イタリアの煮物)の鍋をつかんで落とす素振りをすると、むしろ喜んでさらに足に絡んできたので諦めて昼食作りに戻る事にした。
ただ、メローネさんは邪魔だったので蹴りはがしておく。
「ベネッ!!」
どうしてこうもアクの強い人ばかりなのだろうか。
しかしこの人達、何の仕事で生計立ててるんだろ。
金が無さそうに見えて、突然金回りが良くなって持ち込まれる食品やプロシュートさんの服が高級品に塗り替えられる時もある。そんな不安定な職業ってなんだろうか。
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