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「誘拐犯?とんでもない、オレたちゃ巻き込まれて迷惑してんだぜ」

でも迷惑だと言っているプロシュートさんの顔はどこか嬉しげだ、きっと内心わらっているのだろう。
あの後、強制的に元いた部屋に連れ戻された私は、色々と説明をうけた。
天使とかお仕事とかファンタジーな事はよくわからないけれど、とにかくこの人達に預けられたという事は理解できた。

「ごめんなさい…」

私はここに成人するまで預けられたのだそうだ、今まで何回も人生をやり直せてたのが幸運だったんだ。そのチャンスをちゃんと使わないから、家族のいないこんな世界でやり直す事になったのだ。
全ては自分が悪いんだ、仕方ない。

とにかく、今回の人生こそ成人するまで無事にすごせば、その天使とかいう人も助かり、この人達は報酬が貰えて、私も自由になれる。

「これ、確認してみて。君のために買ってきた服や靴だから、あってるといいんだけど」

気弱そうな少年、ペッシ君が私に紙袋をくれた。先ほど外で持っていた袋みたいで、中には洋服類が入っている。どうも私のために買ってきてくれた物みたいだ、この部屋には女性がいないから間違いない。

「ありがとう、よくサイズがわかったね」

今日合ったばかりの人の服を、それも男性が買ってきてくれたわりに、服や靴はぴったりと私に合った。
しかしなんだか高そうなロゴの付いたショッパーばかりだ。昔私が小さい頃に、着道楽のお父さんがネクタイを物凄い値段で買っていた某ブランドの袋もある。
この人達の服だって派手だし、こんな高い服を普通に買えるなんて…この人達一体何の仕事しているんだろうか?
それとも全部天使とかいう人のお金なんだろうか、そうだとしたら凄いけど、そのお金もっと前から私にくれればよかったのに。ケチな天使だ。

「持ち上げた時に大体わかったからな」

ん?
ちょっと待って、持ち上げた!?何だその恥ずかしいイベントは!しかも私記憶にないんですけれど…いやなんか金髪の人に持ち上げられたような記憶はあるけど長髪だったし。
でも、プロシュートさんをよく見ると髪の毛を結んでいる。これはもしかして……

「じゃあオレもはかろう」
「ギャッ!!」

顔を赤と青に変化させながら考えていたら、変態、いやメローネさんが飛びついて来たので、とっさに叩き倒してしまった。
すぐに謝ろうと思ったけれど、リビングの床に倒れこんだメローネさんは気持ちの悪い笑顔をうかべていたので、そっとしておく事にした。

私、この人達になれてきたような気がする。





「ところでプロシュート、カードは問題なかったか」

ユキを囲んでいるリビングから少し離れた所にいるリゾットに呼ばれ、今回の報告をする。
ユキの持ち物の調査結果だ。

「カードもパスポートも問題なし、あのクソ高い服も問題なく買えたぜ。ついでにオレの服もな」
「……また買ったのか」

アジトで暮らしているのが、主にリゾットとオレだけなせいかリゾットはオレに対する小言が多い。

「うっせえぞリゾット、母親みたいにチェックすんな」

「十分な枚数あるだろう、そのうち部屋が埋もれるぞ」
「出生記録も確認したぜ、でもこいつの家族らしい奴等はこの世にいない」

役所に入り込んで調べるのは苦労した、最近は何でも電子化しやがるからな。

「この世にいない?」

そう、ユキなんて奴は実際には『いなかった』

「全部書類上だけのデータだ、でもさっきアイツはそこに祖母の家があると言ったがそんな家は昔からなかった」
「あの天使とか言っていた男、どこからあの子供を連れてきたんだ?」

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