短編 | ナノ



(ウォッチメンの某ヒーロをモデルに)



「名前また夕飯を食べこぼしたな?汚れくらい自分で拭け、お前は女という自覚はあるのか?」
「何を言っているんだリヴァイ、下半身に突っ込める穴が2つあるから女に決まっているだろう」

俺の部下に名前苗字という女がいる。
討伐数はミケに並び、その殆どが単独討伐という称賛に値する戦果を得ている。調査兵団の斬り込み隊長だ。
だが人として、女としては屑だ。

「馬鹿、突っ込む穴は1つだ。もう1つはクソを出すほうの穴だ」

まず言葉使い、基本的に他者と関わりを持たない主義の名前は本題からいきなり話はじめる癖に、時々冗談とも本気とも判断つかぬふざけた受け答えをする。

「世の中にはそこに突っ込む屑野郎もいる」
「お前の穴には誰も突っ込まないだろうがな、両方とも」

名前の生活習慣は酷いという言葉を通り越している。
少し目を離しただけで、人として取るべき行動を放棄する。
顔も口も、体すら洗わず、常に同じ服を着て、風呂にも入らず、食事は食材を調理せずそのままかじりつき、ただ立体機動を駈り敵を削ぐ事だけを考えて。
そうして彼女の世界は彼女と巨人という敵のみになり、戦う事だけが彼女の生きる糧となる。なんというシンプルな世界だろう、その世界には俺は存在しない。ただ側にあるだけだ。

なつかない猫のような彼女を俺の部屋に呼ぶようになったのは、最初は調査兵団内部から苦情が出て世話をするようになったからだ。

紆余曲折を経て、エルヴィンの説得を受けて妥協した名前は、その選択した人生の為に切り捨てた人間的生活を俺に押し付けられる事により、苦情を回避するようになった。

今日も兵長用の部屋の一人用風呂に渋々浸かり、顰めっ面を晒しながら身体中を俺に洗われている。水を嫌がる素振りは本当に猫のようだ。

「誰も突っ込まない事にこしたことはない、私は男は嫌いだ」

名前は男が嫌いだと言う、だが同性愛者でもないらしい。それは彼女が孤児出身という事に端を発しているようだが、名前は自分の過去を嫌っているらしく一言も話さないので理由はわからないままだ。
彼女の生き方は、憎い巨人を倒すことに一切の妥協を許さないと全身で訴えている様に見え、また同時に人との関わりを拒絶している。
以前なぜこんな生活を続けるのか問うたら、巨人を狩るのに必要ない事はしない主義だと返された。

「名前、じゃあ何故俺が突っ込んでも文句を言わないんだ?」

毎日磨き整えると、名前はそこら辺の女とは違う事が良くわかった。
邪魔だとザンバラに短く刈られていた髪は艶のある金色で、汚れに隠れていた瞳も美しい空の色をしている。体は背中には傷1つ無く、兵士らしい引き締まった体と女性特有のしなやかで丸みをおびたラインが共存していた。

彼女を初めて磨きあげた時の高揚感は例えようがない。

そして一緒に生活するうちにそういう関係になる事にあまり時間はかからなかった。

「それはリヴァイがリヴァイだからだよ、それにお前は上手いから不愉快な事もない」

彼女は不必要な事は言わない、だが俺だからという言葉はどうとでもとれる言葉だ。どうも彼女は好意を伝える言葉をはぐらかすきらいがある、俺に対してだけならいいが軍で礼ひとつ言えない事についても後々どうにかしてやらないといけないだろう。

体から水滴を全て拭き取り、風呂場から寝室へ連れ出し、俺の部屋と同じように清潔になった名前をベッドに横たえた。

「ただ、綺麗にした後で汚す行為をするというのだけは理解できないな、お前は潔癖症だろう?せっかく洗ったのに……ベッドまで汚れるぞ」

壁外ではエルヴィンの指揮に率先して集団行動から飛び出していき俺を急かすが、壁の内側では俺にされるがままだ。

前までは無反応だったが最近は教え込んだかいあって少しは前戯を自分からするようになった。
俺からの口付けに呼吸が上手くできず酸欠で真っ赤になりながらも、手は俺の脇腹をたどり、明確な意思で中心部を探し求める名前が可愛らしい。この姿は俺だけの物だ。
ちょっと前までは何も知らなかったにしては上出来だ、教え込んだかいがある。
苦しさからか名前の目にうかんだ涙を舐めとると甘辛いような気がした。



「次の壁外調査いつだろうな、あいつら早く削ぎまわりたいもんだ」

褥で話すにはだいぶ物騒な話しかしないこの女を俺は愛している。

名前の左手が俺のうなじに絡み、右手はきっちりと着こんだ俺のズボンの留め具を外し始めた。

彼女は無駄な、無意味な事はしない。
口にはしないが俺と同じ感情を持っているのだろう。
彼女の世界は、確かに誰にも入り込めずシンプルだ、だが俺だけが名前の世界の側にいる。

「ああ、俺も奴等を早く削ぎ落としたくて待ちきれないな」

俺も彼女と駆ける戦場が待ちきれない。




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妥協しない男、ロールシャッハさん(35)がリヴァイのモデルとの噂を聞いて、あー胸元とか性格境遇似てるけど根本的に違うなー、と思って書いてみました。
よってロールシャッハ×ロールシャッハをやってみた、それだけです。
しかしこれは夢小説なのか…?