連載したいなぁなネタの話
まあそんな余裕無いんですけどね…
「……やめて…もうやめてくれ…ヴァレンタイン大統領!」
ルーシーを中心に世界が回り始めた列車の中で私と彼だけが自由だ。
でも私には攻撃する術が無い。
ディエゴとホット・パンツを守るために駆けずり回った私はぼろぼろで隠さなくてはいけない体が見え隠れしている。
まだ『女』の身体になっていないので、じっと見なければ男女の骨格の違いはわからないかもしれない。
「成程、『あの女性の遺体』をその身に納められる男という事が不思議だったが替え玉だったか、本物の侯爵は噂通り危篤状態なのだろう。このレースに参加した理由が不自然だったのは、死に行く弟への餞か」
だが目の前の男は気付いている様子だ。
「名前なぜ?なぜ君はこの列車に乗ったのだ?なぜレースに戻らない?君は遺体には関係無い、いや関わらないと約束した人間だろう?」
大統領が小首傾げ、彼の長い髪が顔を半分覆った。D4C、いともたやすく行われるえげつない行為がまた始まる。
「君が死ねばもう『変わり』はいない。君がどの世界にも存在しない、この世界だけの人間だという事はわかっている」
「もう大切な物を失いたくないんだ」
頬が焼けるように熱い。
"Sinner"の文字が浮かび上がってきた。
受付一番乗りの男に話を持ちかけると決めていた、だから彼でなくてはいけないという事はなかったのだ。
「君がディエゴ・ブランドーかい?君はこのスティール・ボール・ランで1位になりたい、まあこのレースの参加者が皆思っているね。私以外は」
曰く付きの男だが、私には必要な男だ。どうにかして仲間に引き入れなくては。
「Mr.ブランドー、取引をしないか?君の望む物すべてが報酬だ」
「君を見ていると弟を思い出すよ」
私をシルバー・バレットと共に置き去りにした男は尻尾を生やしてハイテンションで帰ってきた。
彼は遺体の一部を手に入れたのだろう。
今は興奮に疲れて、私の体を枕にぐっすり夢の中だ。意外に可愛らしい所もあるようだ。
それは私の体の中にある遺体の一部を弟に分け与えた時の記憶を呼び覚ました。
「君がゴールするたび、まるで弟が走っているような錯覚をするんだ」
私は自分の胸に手を突っ込み遺体の一部を取り出してディエゴにあてた。遺体はずぶすぶとディエゴの肉に沈みこんでいく。
「君に勝って欲しい。すべてにおいてね」
「名前、こんな事をして良かったのか?」
そう咎める割にディエゴの顔はにやついている。
「『私が』レースを完走する。目標は達成した、何も問題は無い」
「じゃあ取引の報酬を頂こうか!」
急に体が引かれ、ディエゴが顔をぐっと近付け唇を深く合わせてきた。
「俺にくれるんだろう名前?金と、地位と、名声と、女をさ」
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