短編 | ナノ



元ネタは映画アンブレイカブル(ネタバレ)明るいヤンデレを目指す。荒木荘=各部ラスボス、ジョースター邸=各部主人公、ディエゴは別の所に住んでる(単身赴任的な)ボスは原作と同じで二人で一人、分かれてない
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目が覚めたら、凄い美形の男性7人に顔を覗きこまれてた。

キャー!!名前こんなイケメンに囲まれて幸せだなあー!こんなに見つめられて恥ずかしい!どうしてずっと私を見てるのかな、私のことが好きなのかも?えー!7人も同時に恋愛なんて無理だよお〜でも、一人に選ぶなんてこともできないし困っちゃう〜

…なんて思う訳ないじゃない馬鹿野郎。

いきなり知らない奴らに囲まれる恐怖ってのは、映画みたいにトキメキが発生する余裕なんて生まれないってこと、身を持って証明したくなかったけどしちまったぜ。

それにこの人達、顔はいいのに凄くやな感じがする。どこが?って聞かれても上手く答えられないけど、絶対にヤバい感じがするって。

でも、逃げようにも囲まれていて無理だ。しかも全員マッチョ過ぎてすり抜ける隙間なんて存在しない。
外の景色がちっとも見えないから、ここがどこなのかも分からないよ。唯一分ったのは私が立っている場所は地面じゃないってこと。

ちょっと柔らかい素材でできた緑色の模様が並んでいる。これ、写真で見たことある。日本の畳ってやつだ、じゃあここは日本人街とかなのかな?
でもこの人達日本人には見えないんだけど。

なんだよこいつら、実はWWE選手だったりするだろ。しかもヒール役でさ。

それに見たくはなかったけど、視界が筋肉で塞がれた不可抗力でよく見てみたら、何か網とか半裸とかわかんない服着てるし、わりとマトモそうな人も紫シャツに髑髏ネクタイとか神父服とか。
ヤバい、ヤバすぎる、マジヤバイ早くここから逃げ出したい。

助けて承太郎!

「「「承太郎!?」」」

「え?あ…あ、え!?」

混乱し過ぎて頭の中だけで叫んだはずのヘルプコールが、思いっきり口から漏れてたらしい。
いやそれは別にいいんだけど、マッチョ達のうち3人程が私の呼んだ名前に反応した。

あれ?もしかしてこの人達承太郎の知り合いだったりするの?
じゃあ悪い人じゃないじゃん、なんだーヤバい感じとかただの気にしすぎだったんじゃん。

「助けてだと?アイツに助けを求めるなど……お前、こちら側の人間じゃないな」
「なぜここに来た、私達を倒しにでも来たか?」
「まあ待て。こんなガキがたった一人で乗り込んでくるんだ、恐ろしい能力を持っているに違いない」

上半身裸の黄色い人と神父と派手スーツの3人に問い詰められ、よくわかんないけどとりあえず返事をしようと口を動かした瞬間、私を囲んでいたマッチョ壁が消えた。

物凄い速さで、しかも警戒されている。

いや、警戒したいのはこっちなんだけどな。私は外見も中身も平平凡凡、そっちはプロレス顔負けの強面ばっかなんだ、そんなゴキブリでも見るような目で怯えないでほしい。

「能力ってスタンドのこと?私のは別に大したもんじゃないけど…」

とにかく私はあやしい者じゃ無いって事を証明する為に1冊のノートを取り出した。私のスタンドはこれなんだよね、攻撃なんて出来る訳ないじゃない。

なのに、ノートを見ても遠巻きに威嚇する男達は、部屋の隅にある電話機に飛びついた。うっわ、凄くレトロな黒電話だ。受話器を持っている人が「おいジョースター」とか言ってるのが漏れ聞こえる。

まあいいか。ジョースター家の誰かが来てくれるなら、この変な状況もどうにかなるだろう。

でもそれまでマッチョに囲まれたままってのも落ち着かなくて嫌だなーなんて思ってたら、アミアミの服を着た頭が紫色のお兄さん__いや、おじさんかな?がおそるおそる寄ってきた。

「……本当に大した事ないなら、お前の能力を言ってみろ」

「そんなに怖がらなくても大丈夫ですって。私の能力は、過去の出来事をこのノートに写しだして読めるだけですよ。本に載ってる事だけじゃなくて、誰かが秘密にしてる事だってわかるんですよ!例えばお兄さんの事だって……ん?ギャング?パッショーネ??」

ちょっとおじさんの事調べて能力を信用してもらおうと思ったんだけど、これってもしかして触れちゃいけない系ってやつ?
承太郎よりも先に警察呼ばなきゃいけないんじゃね?

っていうか、ここにいる人達みんな、やっぱりヤバい奴らなんじゃ……ゆっくり視線を反らして、おじさんの顔を見ないようにしたいのに、物凄い険しい表情が目の間にあってそれを許してくれない。
近い、近すぎる。あと、やっぱりこの人お兄さんじゃない、皺っぽいの発見しちゃった。

「それ以上俺のことを口にしたら…」

眉を釣り上げ怒鳴ってくるおじさんの体の向こうに、さっきまで部屋にいなかった人が見えた。

いや、人じゃない。カラフルなカラーリングのそいつはスタンドだ。
しかも私に向かって拳を振り上げてるじゃないか。


「ギャーーーーッ!!」

やっぱヤバい人だった、早く助けにきて承太郎!でもそれまでどうやって凌げばいいんだ。

私のスタンドはスタンドとはいっても硬さも厚さもただのノート、だからそれで戦っても何の攻撃力も無いのだけど、とにかく何でもいいからと思いっきりおじさんにぶつけてみた…

「ぐあっ」

…ら、うまい事急所に当たったらしくおじさんは撃沈した。
うわっ、ギャングなのに弱い……というか、ノートの角で流血するとか、この人凄い弱っちいか凄い運が無くて打ち所が悪かったんだろうか。

「やば…」

助けてあげたい気もするけど、そもそもこの人達悪人っぽいし、私を誘拐したっぽい気もするし……うん、無視して逃げよう。

おじさんが倒れてくれたおかげで、扉が見えて逃げ道が切り開かれた。しかも他の人達は電話機にかじりついてるから距離がある。
ありがとうおじさん、でも君の事はすぐに忘れたい。

とにかく逃げよう、と扉までダッシュしたはずが首筋に衝撃を感じ視界がブラックアウトした。
そんな、あとちょっとで助かりそうだったのに。

「じょ、じょうた…ろ……」


何度も彼に助けを求めたけれど、変な感じがする。
いつも承太郎のこと頼りにしてたはずなのに、それをするのがおかしいような、むしろ私って彼に会っちゃいけないような。何でだろう。

でも暗くなっていく視界の中で、そんな事どうでもよくなってしまた。