短編 | ナノ



あまあま他人視点あり
主人公104期設定、みんなで調査兵団してるパラレル
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「ごめんねみんな心配かけちゃって……」

この前の壁外調査で巨人の血を頭から浴びた私は、その場で川の水で汚れを落としたのだけど服を乾かさなかったから風邪をひいてしまった。せっかくの休暇がベッドの上で同期のみんなにも迷惑かけちゃって…ほんと私なにやってるんだろう。

「気にすんなって、ありゃ誰でも風邪引くぞ」
「馬鹿は風邪引かないっていうだろ、よかったじゃん名前」

ジャンとコニーが落ち込んでいる私をなんとかしようと色々声かけてくれるけど、正直聞いているのも辛い。

(こういう時って男は役にたたないよね…)

男どもとサシャはあわてて部屋を右往左往してるだけだ。クリスタ達があててくれた水枕が気持ちいい…クリスタ結婚しよ。

「え?季節外れの風邪は馬鹿が引くんだぞ?」

幸せな気持ちに浸っていたところにエレンが爆弾を投下した。

「そうなんですか!?エレンは物知りですねえ」
「一応医者の息子だから」
「一応ってなんだよ一応って」

サシャとエレンとコニーの朗らかな会話が病身に追い討ちをかける、もう許してほしい。

「………」
「馬っ鹿エレン!!お前もう黙ってろ!!」
「なんだよ!?何急に怒ってんだよ!!」

気力の無くなった私は突っ伏して寝る事にした。みんなせっかくの休みなんだしさっさと外に遊びに行ってくれ。


名前が力尽きて眠った後、看病の為に一人で残ってはみたものの何もやることが無い、せいぜい水枕を取りかえるくらいだ。

(汗を拭く…のは同性じゃないとちょっとね)

椅子に座ってぼーっと起きるのを待っていると、ノックもなしに##の部屋のドアが開いた。

「お前は……」
「ア、アルミン・アルレルトです!」

予想外の人物だ、開いた扉の先にはリヴァイ兵長がいた。

(名前と仲がいいとは聞いていたけれど、下っ端の部屋にまで来るような関係なのか…)

名前もリヴァイ兵長もあまり普段はベタベタしない性格のせいか二人の関係は同期でもよくわからない。リヴァイ兵長に一番近い位置にいるのが鈍感なエレンなので普段の仕事の様子では普通の上司と部下だとしか聞いていなかった。

「そうだったな。名前・苗字の私室で何をしている」
「同期の看病です」

兵長は訝しげに僕を頭から爪先まで確認し睨み付けた、同期とはいえ異性の宿舎に一人でいるのだから不審に思ったんだろう。

(……まてよ、それは兵長も同じじゃないか。なんで兵長は名前の部屋に?)

「そうか、じゃあもういいぞ。俺が代わる」
「え?」

あっさり僕の言葉に納得した兵長は、大きな荷物を抱えて名前の寝るベッドの側へと行ってしまった。

「へーちょー?」
「起きたか馬鹿」

大荷物を床に下ろす音で名前が起きた。

「馬鹿らないれす名前ですよ…二人の時は名前呼んでくらはい……」

名前は扉の近くに僕がいることに気づいていない、『二人の時は』ってどういう意味だ?
リヴァイ兵長は無視して荷物を漁る。

「ミカンとモモ、どっちだ」
(大雑把だな…)

どうも持ってきた荷物の中に缶詰があるようで、それについて言っているらしいが主語が無い。風邪で寝込んでいるのにあれでわかるのだろうか。

「みかん」
「そうか、ちょっと待ってろ」

(あれでわかるんだ…)

二人の会話は会話が繋がって無いように見えて、二人のコミュニケーションはうまくいっている。案外、エレンからきいているよりも二人の仲はいいのかもしれない。

リヴァイ兵長は荷物の中から缶詰をひとつ掴み万能ナイフでギリギリと開け始めた、この人は潔癖性で細かいわりに所々が大雑把で面白い。
一回り切り取って蓋を作るといきなり手を突っ込んでシロップに漬かったミカンをひと塊取り出した。

(えっ?手!?手掴み!?)
「おいしいれすへーちょー…」

それをそのまま名前の口へ押し込む、強引にいったので準備ができていなかった名前が苦しそうにモゴモゴ言っているが、兵長は名前の唾液が手に付くのも構わず指でミカンを押し込んでしまった。

「そうか。熱は?」

口に押し込んでいるものとは反対の手を名前の額にあてると名前が気の抜けた顔で笑った。

「冷たくてきもちいい…」
「汁がこぼれてるぞ」

リヴァイ兵長が名前の口もとを舐める。

「くすぐったいれすよ」

名前の笑い声だけが部屋にやけに響いた。



「………」

これは…これはどう考えても二人はそういう関係だ。エレンは近くにいるのになんで気づかないんだ、居心地悪いしここにいたくない。

「じゃあ僕、もう行くけど安静にしててね」

後でみんなから名前の様子をきかれたが『大丈夫』ぐらいしか返すことができなかった。

当てられる、主人公フラフラで気が回らなくて恥ずかしくない、逃げる