訓練兵として入団したその日、後から知ったのだが『通過儀礼』と呼ばれている問答―――の時から彼の事が気になっている。
ずっと彼の事を気にしている。
「つまんないつまんないつまんないですー」
サシャの恨み節がやたら部屋中に響く。
トロスト区の騒動から初めての壁外調査と連続して緊張感のある生死をかけた戦場にいたはずなのに、壁外に帰ってから皆の緊張の糸はだらけてしまっていた。
なのに二人から感じる緊張感と焦りに、私の頭はどうにかなってしまいそうだった。
だらだらとテーブルに集まる104期生で真実に気付いた人は私以外にいるだろうか?もしここにアルミンがいたとしたら気付いたかもしれない、彼は壁を壊した二体の巨人を見たことがあるはずだから。
私も見たことがある、でも彼らの事は嫌いになれない。どうしてあなた達は人間なんだろうか、こんな真実は知りたくなかった。いっそのこと数日前に死んでしまっていれば、真実を知らずにいられたのに。
「ねえライナー、無理してない?いつも皆の事を気にかけてくれて嬉しいけれど、もっと自分の事を考えて楽になってもいいんだよ?」
私の言葉を聞いた途端、横にいたベルトルトが物凄い形相で私を見た。なぜそんな事を言う、何を知ってるんだとベルトルトの焦った表情から無言の叫びが聞こえる。
(―――ああ、やっぱりそうなんだ)
馬鹿で落ちこぼれの癖に、こんな時だけ勘がいいだなんて私ってほんと最悪。
「何言ってるんだ名前お前こそ顔色が悪いぞ?お茶でも取ってきてやるからそこに座って休んでろ」
そう言ってテーブルから去っていく君の背中が遠い、きっと私の手は届かない。
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